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人物・文献情報データベースWHOPLUSの“人物”をテーマにしたブログです!
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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第35回)    坂本あおい
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両刀遣いの男

同年輩の男女があつまってカフェで談笑していたとき、わたしは無邪気にケー
キをパクつくある男性に質問した。
――あなた、ひょっとして両刀なの?
と、その場にいたみんなが凍りついた。唐突に質問したわたしが悪かったのか
もしれないが、全員が全員「両刀=バイセクシュアル」だと解釈したのだ。結
果、みんなは大爆笑。わたしは、恥ずかしい失言をした道化役にされてしまっ
た。ちょっと待ってよ、みんな! 両刀とはこういう意味ですよ。

1 大小の刀を左右の手に持って戦う剣法。また、その人。二刀流。二刀遣い。
2 二つの事が同時にできること。また、その人。「演出家と俳優の―」
3 酒も甘い物も好きなこと。また、その人。甘辛両党。
(大辞林「両刀遣い」の項より引用)

わたしが言ったのはもちろん「3」の酒+甘い物の意味だ。バイセクシュアル
は「2」の語義に含まれるともいえるけど、独立した項目があるということで、
辞書的には甘辛両党のほうに軍配でしょう。それにしても、なにも全員が勘違
いしなくてもねェ。みんな「3」の意味を知らないのか、それとも、わたしは
そっち系の話が好きだと思われていたのか。どちらにしても、おそろしいこと
だ。

さて、WHOPLUSの中をさがしてみると、こんな両刀さんがいた(ちなみ
に「甘辛両党」「バイ」の両刀さんは、残念ながら不在)。

◎ 能勢頼誼(剣客)
旧松本藩士。幼少より武芸を好み、剣術を得意とした。安政6年(1859年)上州
高崎の剣客・津田明馨に入門し、天真伝一刀流の極意を修得。のちには道場を
  営みながら剣技を研磨し、両刀の新技法を編み出して天真伝剣法を創始した。

◎ ブロック,アーネスト(経済学者)
ニューヨーク連銀のリサーチ部門エコノミストからファイナンス分野の教授に。
著書に「投資銀行の内幕」があり、その実務・理論の両刀使いの特技を生かし
  た「Regulation and Deregulation, Impending Changes for Securities Markets」
など数冊の共著者または編者としてつとに名高い。
(データベース「WHOPLUS」より一部抜粋)

いずれも才能があって器用でないとできない芸当だろう。わたしは不器用だから、
「両刀」のどの用法についても、刀は一振りでじゅうぶんだ――とりわけ「3」
の意味においてはね。

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第34回)   坂本あおい
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胸おどる靴と太宰治

《地下足袋というものを、その時、それこそ生まれてはじめてはいてみたので
あるが、びっくりするほど、はき心地がよく、それをはいてお庭を歩いてみた
ら、鳥やけものが、はだしで地べたを歩いている気軽さが、自分にもよくわかっ
たような気がして、とても、胸がうづくほど、うれしかった。》

太宰治の『斜陽』を読んでいて、こんな一文にあたった。わかりますよ、その
気持ち。わたしも地下足袋やゴム長をはいて、雑草のしげる「お庭」を歩いた
ことがある。靴に土が入るのを嫌ったり、すべりやすい足もとを心配すること
なく、土に近い場所をガシガシ歩きまわれるあの気軽さ! このいきいきとし
た描写から察するに、太宰さんもきっと地下足袋経験者だろう。

小さい頃、わたしのお気に入りの一足は、黒い革の紐靴だった。まだ自分では
うまく結べなかったから、大人の前に足をポンとおいて、キュッと結んでもら
う。人によっては跪いて、膝に靴をおいて結んでくれた。うーん、快感。それ
はともかく、大人の力で結んでもらった紐靴は、足と一体化して、思わず駆け
出したくなるほど。これまた太宰さんにオススメしたい軽やかさだ。

ところで、太宰の実際の歩みが、軽やかとは程遠いものだったのはご存知のと
おり。それはWHOの経歴にもよくあらわれている。

東京帝大在学中は共産主義運動に関係したが脱退、自殺未遂事件をおこした。
同年都新聞の入社試験に落ちて自殺を図る。
11年作品集「晩年」を刊行するが、同年芥川賞の選に洩れ再び自殺未遂。
23年6月遺稿「グッド・バイ」を残して山崎富栄と共に玉川上水で入水自殺
を遂げた。
(データベース「WHOPLUS」より)

最後に入水自殺を遂げたとき、人生という鉛の靴を岸に脱いでいったのだろう
か? それはわからないが、調べたところ、上の入社試験後の自殺では、靴紐
で首をしめようとしらしい(紐が切れて未遂に)。靴紐にそんな使い道があっ
たとはね。太宰治の話をするとつい暗くなりがちだが、彼はこんなワクワクす
る文も書いている。

《私たちムスメが、それを身につけると、たまらなく海の見える砂丘に立って
みたくなるものです。旅行がしたくなって、たまらなくなるものです。きょう、
銀座のローヤルで見つけて、かえりにすぐ身につけて来ましたの。私、歩くの
が嬉しくって、楽しくって、自然に眼が足もとへいってしまうのです。もう、
おわかりでしょう。靴なのよ。》『俗天使』より

現ムスメ、元ムスメのみなさん、読んだだけでも胸おどりませんか? 軽やか
な秋靴を調達して、涼しい風を待ちたいものですね。

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第33回)   坂本あおい
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王子たちよ、王になれ

昨今はちょっとした王子ブーム。才能のあるキレイな青年を見るのは無条件に
楽しいものですネ。ところで、かつての日本大食い界にも人気をほこった王子
がいた。今ではNYのホットドッグ早食いでおなじみの、小林尊さんだ。彼は端
整な顔立ちと天賦の才能で、テレビ界にあらわれると同時に〈プリンス〉と呼
ばれるようになる。
あのときの衝撃たるや!美青年というより美少年風の小林氏が、それまで世間
を驚かせてきた花形選手たちを、リズミカルかつ破壊的な食いっぷりで、いき
なりやぶってしまったのだ。

大食い番組には反対派も多かった。人が苦しそうに食べるさまを見て、何が楽
しいのか? ごもっとも。でも格闘技的興奮、人間の身体の限界を見る驚き、
なぜここまでするのかという疑問―なんだかよくわからないけど、魅力がある
のも事実だった。やがて人気企画は他局に飛び火し、派手な演出とその後あら
われた個性的な選手のおかげもあって、ファン層はさらに拡大する。
が、ある事故をきっかけに、各局はこうした番組を一斉に自粛。燃えあがった
日本のフードバトルの火は、ファンの心に興奮の熱を残したまま消えることに
なる。

けれどその時期、〈プリンス〉はすでに世界を見ていた。2001年のNYのホット
ドッグ大会でブッチギリで優勝したのを皮切りに、日本が自粛の時代に入った
あとも、アメリカの熊と対戦したり、コンテストで連勝したりしながら競技界
を大いに盛り立て、いつしか世界が認める王者として頂点に君臨していた。こ
こ数年の各種の記事によれば、コビヤ~シは食べ物競技界の革命児であり牽引
役であり、スターであり、英雄であり、生きた伝説だという。もはや〈プリン
ス〉の称号など用はない。

以前、西洋と日本の神話伝説を比較する小論を読んだことがある。西洋の話か
らは、王子が困難と冒険の末みずから王となる父性型の特徴が読み取れるのに
対し、たとえば日本のスサノオは、せっかく大蛇を退治して剣を手に入れたの
に、それをアマテラスオオミカミに献上してふたたび母性のなかに吸収される。
この論をなぞるとすれば、ただ強いだけはでなく、新たな地平を切り拓いて王
として君臨したコバヤシは、(ヤマトタケルからとった本人の名前を別にすれ
ば)やはり西洋型か?英雄が大好きなアメリカ人に英雄として認められたのも
うなずける気がする。

◎ 小林 尊(フードファイター )
昭和53年生まれ
平成12年テレビ東京「TVチャンピオン」の大食い選手権で優勝したことから、
13年ニューヨークで開かれた全米ホットドッグ早食い世界大会に出場。173セ
ンチ、60キロの華奢な体格ながら、最高記録を大きく上回り、優勝を飾る。そ
の後、テレビの大食い番組で活躍、フード・ファイターとして日頃からスポー
ツ選手同様のトレーニングを積む。18年全米ホットドッグ早食い世界大会で6
連覇。数々の世界記録を持ち、"The Tsunami"のニックネームで呼ばれる。現
在の体重は75キロ
(データベース「WHOPLUS」より)

ところで彼のプロフィールデータはこの7月で更新されて、経歴には「7連覇
ならず」の残念な一文が加わってしまった。けれどまだ20代の強く美しき王
は、きっとまた何かを見せてくれるだろう。Go, Kobayashi! Go!

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第32回)   坂本あおい
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アカデミックな生活(?)

サル好きを宣伝していたおかげで、とある親切な知人がシンポジウムに誘って
くれた。京都大学霊長類研究所、創立40周年記念の東京シンポジウムだ。タイ
トルは「人間と人間性の進化的起源」。なにやら難しそうで、わたしのような
素人がいって大丈夫なのか心配ではあったけれど、知的刺激がほしい今日この
ごろ、わたしはいそいそと東大のホールへ出かけたのであった。

結論からいうと、類人猿等の行動や知能、社会性の話、化石の話、ゲノムの話、
とテーマが盛りだくさんで、わたしの知能はやや混乱してしまったのだけど、
ヒトの隣人を知り、己を知るという、とても有意義な時間をすごすことができ
た。それに同行の知人によると、講演者はそのすじの花形ぞろいだったそうだ。
たとえば、こんな博士。

ドゥ・ヴァール,フランス(de Waal,Frans B.M.)
動物行動学者 エモリー大学心理学教授
ニーメゲン大学、グロニンゲン大学、ユトレヒト大学で生物学、行動生物
学を学ぶ。ユトレヒト大学ではカニクイザルの研究プロジェクトに参加。
その後、オランダのアーネム動物園のチンパンジーを研究。1981年渡米し、
ウィスコンシン州マディソンにある霊長類研究所でボノボ(ピグミーチン
パンジー)などの研究を続ける。著書に「政治をするサル」「仲直り戦術-
霊長類は平和な暮らしをどのように実現しているか」「ヒトに最も近い類
人猿 ボノボ」などがある
(データベース「WHOPLUS」より)

この方はタイム誌が選んだ今年の「世界に最も影響力のある100人」のうちの
1人。博士の講演は、動物画像が多く出てくることもあって、素人にもとても
面白かった。そんななかに鏡を使った自己認識の実験映像があった。一部の知
能の発達した動物は、鏡に映った自分を、他者ではなく自分だと認識できる。
そうした能力がゾウにも備わってることが、近年、実験であきらかになったの
だ。博士によれば、実験には“elephant proof(ゾウ耐性)”の鏡が必要だそう
で、察するに、ゾウの巨体によって過去に割られた失敗もあったのだろう。ア
カデミックな研究も、現場はなかなか「ガテン」なのかもしれない。

シンポジウムに参加したあと、わたしは講演者の経歴や、よくわからなかった
キーワードについて調べてみた。得た知識を少しでも消化しようと思ったのだ。
けれどわたしの好奇心をとらえてしまったのは、上のドゥ・ヴァール博士の経
歴にあった「グロニンゲン」大学、という文字。これはオランダの都市名で、
どうやらほかに「スケベニンゲン」という地名もあるらしい。現地の発音は正
確には多少ちがうようだが、似たようなオモシロ地名は各所にあって、こっち
のほうの調べ物が楽しくてとまらなくなってしまった。わたしの知能レベルと
は、悲しいかな、きっとこんなものなのだ。

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第31回)   坂本あおい
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聞こえのいい部屋 A Room with Noise

日ごろわたしが仕事をしている部屋は、とあるせせこましい住宅地の二階にあ
る。二階の部屋というのは、前の通りをゆく人の足音から会話からなにから、
とてもよく聞こえるものだ。しかしなんといっても悲劇なのは、スピーカー付
きの車が通るとき。窓の至近距離から繰り出される大音量にはゲンナリだ。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』? それはもちろん、騒音を取り締まる人
間がいないからですよ。

そんなわたしにとって最大の試練は選挙である。さおだけ屋のアナウンスには、
まだのんびりとした風情があるので我慢しよう。でも、お愛想ぶったウグイス
嬢の「連呼」だけは腹が立ってしかたがない。せっかく頭にいいものが閃きか
けても、あれが通ったがためにパーになること、日に何度。なんてことだ! 
だが本当の試練は、じつはここから。広い心で騒音を許せなければ、閃きを失
うばかりか、いらいらして集中力まで失うことになる。わたしはまだ修行が足
りないようで、集中力を失ったあげく、「選挙カーによる経済的損失」などを
熱心に考えてしまうのだ。

集中力を要する仕事をしている人が、選挙カーの通り道に100人いたとする。
そのうち全員が騒音に腹を立てて、一時間仕事が手につかなかったら、仮に
時給1000円として、10万円の損失だ(案外、小さいですね)。

と思っていたら、先月「NO! 選挙カー推進ネットワーク」設立というニュース
が聞こえてきた。選挙カーにスピーカーをつんで音声を撒き散らさないことと、
選挙カーに支払われる公費を請求しないことを柱に活動しているそうだ。代表
の伊藤氏は、どんな方かと思ったら、選挙カー被害多発地帯(=うちの地元)
の議員さんでした。

伊藤 悠(いとう ゆう)
職業・肩書 東京都議(民主党;目黒区)
経歴 平成12年手塚仁雄衆院議員秘書を経て、15年目黒区議に当選。17年
東京都議に当選

(データベース「WHOPLUS」より)

かつて騒音問題がナウだった時代、渋谷のハチ公前広場には「ただいまの騒音
××ホン」という表示がたっていたと記憶する。それが今では大型ビジョンが
いくつもある音の無法地帯だ。時代は騒音容認に向かっているのかもしれない
けれど、せめて、せせこましい住宅地に機械で増幅した音を持ち込むのはやめ
てほしい。それが無理なら、どうか拡声機は車内に向けてください。

ちなみに公職選挙法によると、連呼行為は「禁止」らしい。じゃあ、みんな違
反じゃないかって? 興味のある方は「第140条の2」の「ただし云々かんぬん」
以下をごらんください。これって「禁止」と呼べるのかしら?

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第30回)   坂本あおい
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社長、声が裏返ってますよ!

 ご存知、「ジャパネットたかた」の高田社長。むかしから思っていたのだけれ
 ど、この方は、男性のわりに声が高めだ。商品のウリや値段を言うときには、
 また一段と高くなる。それがこのところ、さらに輪をかけて上昇しているよう
 に思えるのだけど、気のせいだろうか。ピッチがあがると、もはや女性の音域。
 ほとんど声が裏返っていて、とってもほほえましいのだ。記事・論文を検索す
 ると、こんな標題があった。

 しゃべり続けて15年! ジャパネットたかた 代表取締役高田明に聞く お客の心
 に届く話し方――商売も恋愛も一緒。台本どおり上手に話してもメッセージは
 伝わらない(第2特集 できる商人の「話し方」) 
 商業界 59(1) 2006.1 p76~81 
                 (データベース「WHOPLUS」より)

 高音で迫るしゃべり方は、15年以上の訓練と経験の賜物だったのか。たしかに
 あの口上は、しかとわたしの心に届いている。声がどこまであがりつづけるか、
 いつまでも見守っていますよ、社長。

 ところで、最近はポップス界でも裏声ブームなのか、裏声を駆使した気の抜け
 た高音を聞くことが多くなった。しかしなんといっても近年最も強烈だったの
 は、「もののけ姫」の主題歌を歌ったカウンターテナー、米良美一さんの出現
 ではなかったろうか。これが、だ、だんせいの声? 白状すると、あまりの衝
 撃に、わたしも何度かカラオケで真似をさせていただいた。

 男性の裏声史というのは古くて、高音や裏声にもいくつかの種類がある。わた
 しのにわか知識によると、西洋では女人禁制だった聖歌隊の高音部をになうた
 めに、変声前のボーイソプラノや、成人男性がファルセット(裏声)で歌うカウ
 ンターテナーが起用された。やがてその声の弱さを補うためにカストラータと
 呼ばれる歌い手が登場する。変声前に去勢するという荒業で少年の声を保った
 成人男性歌手のことだ。17世紀には教会や舞台でずいぶんもてはやされたよう
 で、圧倒的な魅力からカウンターテナーを脇へ追いやってしまったとか。どん
 な歌声だったのか、非常に興味ぶかい。また、女性ソプラノと同音域をそなえ
 たソプラニスタと呼ばれる貴重な歌手もいるが、声質も発声法も十人十色で、
 いまいち定義もはっきりしていないようだ。

 わたし自身はと言えば、話す声も歌う声もだんぜん低めが好き。でも、こうし
 てグダグダと書いているとおり、男性の裏声がなぜか気になるのだ。まさか、
 これは裏声フェチへの第一歩? 高田社長もいいけど、最近わたし、ミッキー
 マウスの声(ウォルト・ディズニー本人の裏声)にシビレるの、なんて言いだし
 たら、だれか無理にでも止めてください。

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第29回)   坂本あおい
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世界のキタノの本当の実力

 年末に旅行に出たとき、オーストリアの友人と互いの文化について話す機会が
 あった。あんたの国からはモーツァルトのことしか聞こえてこないよ、とわた
 しがおちょくっても、のんびり屋の彼はめげない。日本のマンガなどについて
 ニコニコと話をし、そして、さいごにとても悲しそうに首をふって、こういっ
 た。――最近、「タケシ・キャッスル」の放送がおわっちゃったんだ。大好き
 だったのに。

 一瞬、わたしは耳をうたがったが、タケシ・キャッスルとは、そう、20年ほど
 前にTBS系で放送されていた「痛快なりゆき番組 風雲!たけし城」のことだ。
 そんなものがヨーロッパで放送されていたとは驚いたが、タケシは今では金獅
 子賞を受賞した世界的映画監督だよ、と教えたら、友人はもっと驚いていた。
 どうやら、監督キタノより、タケシ城主のほうがインターナショナルらしい。
 たしかに、ネットで調べてみたら、情報が出るわ出るわ。たけし城は、吹き替
 え版、リメイク版、パクリ版となって、たくさんの国々に配信されていた。旅
 好きの身内の情報によると、機内放送でも流れることがあるらしい。いろんな
 場所で通用する明るい笑い提供したタケシは、たしかに、「世界の」と呼ぶの
 にふさわしいのかもしれない。

 タケシは最近ではテレビであまり面白いことを言うこともなくなったし、正直
 なところ、わたしはかつての漫才ブームのころもお笑いに興味がなかったので、
 彼のネタをきいて腹を抱えて笑った記憶もない。もっと若い世代は、「タケシ
 は本当にコメディアンだったのか?」と思っているかもしれない。そんな人の
 ために、彼のもっとも古い時代の「人物文献」から、当時の評価がわかるもの
 をさがしてみた。

 「漫才」から「MANZAI」へ―若者たちをうならせ、テレビを占拠したあの面白
 さはアルファベットでしか表現できない [山本 益博(評論家)]
 文芸春秋 59(1) 1981.1 p396~404 
                 (データベース「WHOPLUS」より)

 うなるほど面白かったのなら、もっとリアルタイムで見ておけばよかった。そ
 れにしてもこのマスヒロさんの評は、言いたいことがわかるような、わからな
 いような。のちの活躍を予感させる、なにやらインターナショナルな雰囲気た
 だよう文言ではあるが。

 さて、今年にはいり、タケシ・キャッスルでも活躍した「たけし軍団」の番頭
 格が知事になった。彼の番組での役名は「東国原英夫守三太夫Jr.」。今にして
 思えば、それこそ「そのまんま」の名前だった。知事はつい最近のテレビ放送
 で、たけし城を宮崎に再現したい、なんていうことを話していたが、これだけ
 の国際的人気が背景にあることを考えると、あれは、あながち冗談ではなかっ
 たのかもしれない――。

 ※「風雲!たけし城」はCS「TBSチャンネル」で現在再放送されています。

 CS「TBSチャンネル」の「風雲!たけし城」ホームページ
  http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/lineup/v0001.html

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第28回)   坂本あおい
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貧乏の星

 はたらけど はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり――。
 最近、ふとした拍子に、この啄木の詩が頭にでてくる。まるでBGMかテーマ
 ソングのようで、エッチラ、オッチラ坂をのぼりながら、気づくとこの句に合
 わせて足を動かしていたりするから、我ながら情けなくなる。わたしのしてい
 る文芸翻訳の仕事は、日々コツコツと働けど、その報酬を手にするのは先のこ
 とになる。だから、生活が苦しくなったからといって、あわてて大車輪で働い
 ても、わがくらしは俄かには楽にならないしくみなのだ。

 最近、占い稼業の友人がおしえてくれたのだけど、わたしは金運にもめぐまれ
 ているが、それ以上に強力な「貧乏の星」を持っているらしい。金運があるの
 にお金がないということは、浪費するということ? 楽しく浪費できるなら、
 それが一番だネ。そう言うと、友人は「ポジティブ・シンキングだね」と笑っ
 たが、こう、アドバイスすることも忘れなかった。「金運の強い男を見つけて
 ね」。はい、望むところです。

 さて、WHOPLUSの収録者を「貧乏」「赤貧」「生活苦」などの検索語で
 探してみると、筋金入りの貧乏さんが見つかって、気休めになる。中でも目立
 っていたのは、貧乏から成りあがる実業家タイプ、貧しさを飯のタネにする作
 家タイプ、生活苦で命をたつ詩人タイプ、貧しさと接して目覚める社会運動家
 タイプ、それに新興勢力のエンジョイ・貧乏旅行タイプだ。データをつらつら
 ながめていると、貧乏は、古今東西、芸術のテーマにも、人を動かす力にもな
 っていたのだなあと実感する。ちなみに、手持ちの類語辞典をみると、人の貧
 富をあらわす言葉(金持ち/貧乏人)は、「富」のほうがエントリーが多いが、
 貧富の状態をあらわす言葉(裕福/貧乏)は、圧倒的に「貧」のほうが充実して
 いるのがわかる。

 貧乏、極貧、文無し、無一文、すかんぴん、すってんてん、丸裸、無銭、火の
 車、首がまわらない、きゅうきゅう、ぴいぴい、エトセトラ――。

 「富」は他人事なのに対して、「貧」は実感として、人々の身近なところにあ
 ったのではないか、とわたしは共感をもって考察するわけだ。

 話はもどるが、わたしの啄木の詩は、いつもなぜか山上憶良の『貧窮問答歌』
 に移っていく。といっても一つのフレーズしか知らないので、それが壊れたレ
 コードのようにくり返されるのだ。「はたらけど はたらけど猶わが生活楽に
 ならざり、鼻ビシビシに、鼻ビシビシに――」。ビシビシというのは鼻をすす
 る音。いかにもキビシイかんじが気に入っているのだけど、今年は暖冬でビシ
 ビシする暇もなかった。けれどフトコロは相変わらず寒く、さらにわたしの
 「貧乏の星」は、春になってますます精力絶倫なもよう。参ったなあ。

  ◎ 石川 啄木 明治19年2月岩手県生まれ 明治45年4月没
        歌人;詩人;小説家
        盛岡中在学時から詩作に専念、明治35年上京し与謝野鉄幹の知遇を得る。
    38年詩集「あこがれ」を出版、明星派の詩人として知られる。

  ◎ 山上 憶良 斉明6年生まれ  天平5年没
        官人;歌人
        大宝元年(701年)遣唐少録に任ぜられ、翌年入唐。帰国後、筑前守の在
    任中に大宰権帥の大伴旅人と交友し、大宰府を中心に歌壇を形成した。
    「万葉集」に収められた「貧窮問答歌」で知られる。

  ◎ 渡辺 和博 昭和25年2月広島県生まれ  平成19年2月没
    イラストレーター;エッセイスト
東京・四谷の美学校で赤瀬川原平に師事。雑誌「ガロ」の編集長を経て、
    フリーのイラストレーター、エッセイストとなる。職業ごとに金持ちと
    貧乏人を"マル金""マルビ"に分けて評した「金魂巻」はベストセラーと
    なり、"マル金""マルビ"は第1回の日本流行語大賞を受賞した。

                 (データベース「WHOPLUS」より)

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第27回)   坂本あおい
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SUDOKUとは、なんぞや?

 この前、ヨーロッパ旅行にいった時に、とある大型書店に入った。そこは照明
 の柔らかなゆったりとした空間で、あちこちにソファがおいてある。なんと
 「座り読み」OKなのであって、ハタキを持った店員の出現にビクつく必要は
 ないのだ。時間を忘れて、うっかり限界に達してしまったお客さんには、トイ
 レ(無料)も用意されている。喉が渇けば、店内のカフェを利用することもで
 きる。なんと居心地の良い空間だろう。

 そんな書店の中をウキウキと歩いていると、ふいに目に飛び込んできた漢字が
 あった。本の表紙に印刷された、「数独」という文字だ。一瞬、ただのデザイ
 ンかと思ったが、見れば、そのSUDOKUなるものを扱う各種の本のために、
 平積みのコーナーまでできている。適当な一冊を手にとってみると、宣伝文に
 は「ニッポンからやってきた、世界で超有名な数独」と書いてあった。ニッポ
 ン? 超有名っていわれても、わたしは知らないよ!と心の中で叫んでみたが、
 コーナーができるほどの人気の題材だという事実は、現前としてそこにあるわ
 けで――。

 わたしは疑問を引きずりつつ粛々と旅をつづけ、帰国するとすぐに「数独」の
 ことを調べてみた。どうやらこれは、パズル専門誌の「パズル通信ニコリ」が
 きっかけで人気に火がついた、数字を使うパズルの名前らしい。WHOにはニ
 コリ社長の鍜治真起さんのデータもあって、氏の「記事・論文」を見てみて、
 あらためて数独ファンの多さを知った。こんなに有名なものだったのか。

  数独の父・鍛治真起―いまや数独は世界で83か国、毎日1億人ぐらいが解い
  てます(阿川佐和子のこの人に会いたい〔659〕) [鍛治 真起;阿川 佐和子]
  週刊文春 48(48) 2006.12.14 p154~158
                 (データベース「WHOPLUS」より)

 と、ここまでが三週間前の話。
 WHOデータにはニコリのサイトに通じるURLが載っていて、わたしはそこ
 に、パズルのおためし問題を見つけてしまったのだ。それ以来、どれだけの時
 間をこのパズルに費やしてしまったことだろう。WHOの中に、こんな誘惑の
 木の実が落ちているとは、思いもしなかった。

 そんなこんなで、今ではすっかり「数独を知らないの?」という側にまわり、
 世界一億人のパズラーとの連帯感を、日々、深めているわたしである。とはい
 え、わたしの周囲にこのパズルを知る人は皆無で、日本でどれほどの知名度が
 あるのか、いまいち実感がつかめないでいる。これを読んでくださったあなた
 は、数独を知っていますか?

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第26回)  坂本あおい
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入浴な人々

お風呂三昧な「あおい」さん
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 以前、大ヒットした小説に『冷静と情熱のあいだ』という二冊組みの作品があっ
 たが、江國香織さんが書いたほう(Rosso)の主人公は、わたしとおなじ「あお
 い」という名前で、ヒマさえあればお風呂につかっている女性だった。淡々とし
 た静かなラブストーリーだったのは記憶にあるのだが、ディテールを思い出そう
 とすると、どうしてもお風呂のシーンばかりが頭にうかぶ。全身、ふやけてしま
 うのではないか、かえって身体が冷えてしまうのではないか、と心配になるほど、
 なにしろお風呂三昧な人だった。

 わたしは、その「あおい」とはちがって長風呂派ではないのだけれど、このとこ
 ろ気に入っている入浴法がある。バスタブに湯をためつつ、腰の位置くらいまで
 の少ない湯量のうちに中に入ってしまうのだ。こうすると、蛇口からの水の騒が
 しい音と、はった湯のこまかい振動がとてもリラクシング。徐々にお湯もたまり、
 湯気も立ってきて、ゆったりとお風呂の世界にフェイドインできる。

 そんなふうにして湯につかっていると、なぜか脈略のない考えがツラツラと頭に
 うかんでくる。誰でも経験があると思うのだが、ときには名案や名文がうかんだ
 りするから、お風呂の時間はあなどれない。そういえば、あまりのアイディアに
 思わず「エウレカ(わかった)!」と叫んで、裸のまま街へ飛びだしてしまった
 人もいた。お風呂のふちからこぼれた水を見て、比重や浮力に関する原理を思い
 ついたというエピソードを残した、偉大なる数学者、ご存知アルキメデスだ。

お風呂に関する素朴な疑問
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 わたしの場合は、もちろんそんな原理など思いつくはずもない。ある日の入浴中、
 ぼんやりと湯気を見ながら考えたのは、こんなことだ。

 その一、「入浴」と聞いて「あおい」を連想する人はあまりいないだろう。では、
 ふつうの人は、いったい誰を思い出すだろうか? 『ドラえもん』のしずかちゃ
 んだろうか、『水戸黄門』の由美かおるさんだろうか?

 その二、しずかちゃんは、キレイ好きな女の子という設定らしいが、それにして
 も、なぜ、あそこまで入浴シーンが多かったのだろう? あれはマセた少年たち
 への一種のサービスだったのだろうか?

 その三、由美かおるさんは、若いときから体型が変わっていないことで有名だが、
 実際のところ、今、いくつなのだろう?

 この最後の疑問が気になって、わたしはいそいでお風呂からあがって、WHOで
 調べた。それによると、由美さんは昭和25年11月生まれ。つまり56歳ということ
 だ。さらにデータを読むと、《入浴シーンで人気を得る》の一文が。さすがの経
 歴。入浴女王の風格たっぷりだ。

  ◎ 由美 かおる 昭和25年11月京都府生まれ
女優
  昭和37年西野バレエ団に入団。41年「11PM」のカバーガールとしてデビューし、
    同年日活「夜のバラを消せ」で映画初主演。 42年「レモンとメロン」で歌手
    デビュー。西野バレエ団で金井克子に次ぐトップ・スターとなる。映画、テレ
    ビ、歌謡界でも活躍。
                 (データベース「WHOPLUS」より)

 さて、気温もぐんぐん低くなってきて、冬至を過ぎればもうすぐお正月です。柚
 子などうかべて、どうぞ皆さん、よいお風呂を!

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