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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第28回) 坂本あおい
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貧乏の星
はたらけど はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり――。
最近、ふとした拍子に、この啄木の詩が頭にでてくる。まるでBGMかテーマ
ソングのようで、エッチラ、オッチラ坂をのぼりながら、気づくとこの句に合
わせて足を動かしていたりするから、我ながら情けなくなる。わたしのしてい
る文芸翻訳の仕事は、日々コツコツと働けど、その報酬を手にするのは先のこ
とになる。だから、生活が苦しくなったからといって、あわてて大車輪で働い
ても、わがくらしは俄かには楽にならないしくみなのだ。
最近、占い稼業の友人がおしえてくれたのだけど、わたしは金運にもめぐまれ
ているが、それ以上に強力な「貧乏の星」を持っているらしい。金運があるの
にお金がないということは、浪費するということ? 楽しく浪費できるなら、
それが一番だネ。そう言うと、友人は「ポジティブ・シンキングだね」と笑っ
たが、こう、アドバイスすることも忘れなかった。「金運の強い男を見つけて
ね」。はい、望むところです。
さて、WHOPLUSの収録者を「貧乏」「赤貧」「生活苦」などの検索語で
探してみると、筋金入りの貧乏さんが見つかって、気休めになる。中でも目立
っていたのは、貧乏から成りあがる実業家タイプ、貧しさを飯のタネにする作
家タイプ、生活苦で命をたつ詩人タイプ、貧しさと接して目覚める社会運動家
タイプ、それに新興勢力のエンジョイ・貧乏旅行タイプだ。データをつらつら
ながめていると、貧乏は、古今東西、芸術のテーマにも、人を動かす力にもな
っていたのだなあと実感する。ちなみに、手持ちの類語辞典をみると、人の貧
富をあらわす言葉(金持ち/貧乏人)は、「富」のほうがエントリーが多いが、
貧富の状態をあらわす言葉(裕福/貧乏)は、圧倒的に「貧」のほうが充実して
いるのがわかる。
貧乏、極貧、文無し、無一文、すかんぴん、すってんてん、丸裸、無銭、火の
車、首がまわらない、きゅうきゅう、ぴいぴい、エトセトラ――。
「富」は他人事なのに対して、「貧」は実感として、人々の身近なところにあ
ったのではないか、とわたしは共感をもって考察するわけだ。
話はもどるが、わたしの啄木の詩は、いつもなぜか山上憶良の『貧窮問答歌』
に移っていく。といっても一つのフレーズしか知らないので、それが壊れたレ
コードのようにくり返されるのだ。「はたらけど はたらけど猶わが生活楽に
ならざり、鼻ビシビシに、鼻ビシビシに――」。ビシビシというのは鼻をすす
る音。いかにもキビシイかんじが気に入っているのだけど、今年は暖冬でビシ
ビシする暇もなかった。けれどフトコロは相変わらず寒く、さらにわたしの
「貧乏の星」は、春になってますます精力絶倫なもよう。参ったなあ。
◎ 石川 啄木 明治19年2月岩手県生まれ 明治45年4月没
歌人;詩人;小説家
盛岡中在学時から詩作に専念、明治35年上京し与謝野鉄幹の知遇を得る。
38年詩集「あこがれ」を出版、明星派の詩人として知られる。
◎ 山上 憶良 斉明6年生まれ 天平5年没
官人;歌人
大宝元年(701年)遣唐少録に任ぜられ、翌年入唐。帰国後、筑前守の在
任中に大宰権帥の大伴旅人と交友し、大宰府を中心に歌壇を形成した。
「万葉集」に収められた「貧窮問答歌」で知られる。
◎ 渡辺 和博 昭和25年2月広島県生まれ 平成19年2月没
イラストレーター;エッセイスト
東京・四谷の美学校で赤瀬川原平に師事。雑誌「ガロ」の編集長を経て、
フリーのイラストレーター、エッセイストとなる。職業ごとに金持ちと
貧乏人を"マル金""マルビ"に分けて評した「金魂巻」はベストセラーと
なり、"マル金""マルビ"は第1回の日本流行語大賞を受賞した。
(データベース「WHOPLUS」より)
【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第28回) 坂本あおい
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貧乏の星
はたらけど はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり――。
最近、ふとした拍子に、この啄木の詩が頭にでてくる。まるでBGMかテーマ
ソングのようで、エッチラ、オッチラ坂をのぼりながら、気づくとこの句に合
わせて足を動かしていたりするから、我ながら情けなくなる。わたしのしてい
る文芸翻訳の仕事は、日々コツコツと働けど、その報酬を手にするのは先のこ
とになる。だから、生活が苦しくなったからといって、あわてて大車輪で働い
ても、わがくらしは俄かには楽にならないしくみなのだ。
最近、占い稼業の友人がおしえてくれたのだけど、わたしは金運にもめぐまれ
ているが、それ以上に強力な「貧乏の星」を持っているらしい。金運があるの
にお金がないということは、浪費するということ? 楽しく浪費できるなら、
それが一番だネ。そう言うと、友人は「ポジティブ・シンキングだね」と笑っ
たが、こう、アドバイスすることも忘れなかった。「金運の強い男を見つけて
ね」。はい、望むところです。
さて、WHOPLUSの収録者を「貧乏」「赤貧」「生活苦」などの検索語で
探してみると、筋金入りの貧乏さんが見つかって、気休めになる。中でも目立
っていたのは、貧乏から成りあがる実業家タイプ、貧しさを飯のタネにする作
家タイプ、生活苦で命をたつ詩人タイプ、貧しさと接して目覚める社会運動家
タイプ、それに新興勢力のエンジョイ・貧乏旅行タイプだ。データをつらつら
ながめていると、貧乏は、古今東西、芸術のテーマにも、人を動かす力にもな
っていたのだなあと実感する。ちなみに、手持ちの類語辞典をみると、人の貧
富をあらわす言葉(金持ち/貧乏人)は、「富」のほうがエントリーが多いが、
貧富の状態をあらわす言葉(裕福/貧乏)は、圧倒的に「貧」のほうが充実して
いるのがわかる。
貧乏、極貧、文無し、無一文、すかんぴん、すってんてん、丸裸、無銭、火の
車、首がまわらない、きゅうきゅう、ぴいぴい、エトセトラ――。
「富」は他人事なのに対して、「貧」は実感として、人々の身近なところにあ
ったのではないか、とわたしは共感をもって考察するわけだ。
話はもどるが、わたしの啄木の詩は、いつもなぜか山上憶良の『貧窮問答歌』
に移っていく。といっても一つのフレーズしか知らないので、それが壊れたレ
コードのようにくり返されるのだ。「はたらけど はたらけど猶わが生活楽に
ならざり、鼻ビシビシに、鼻ビシビシに――」。ビシビシというのは鼻をすす
る音。いかにもキビシイかんじが気に入っているのだけど、今年は暖冬でビシ
ビシする暇もなかった。けれどフトコロは相変わらず寒く、さらにわたしの
「貧乏の星」は、春になってますます精力絶倫なもよう。参ったなあ。
◎ 石川 啄木 明治19年2月岩手県生まれ 明治45年4月没
歌人;詩人;小説家
盛岡中在学時から詩作に専念、明治35年上京し与謝野鉄幹の知遇を得る。
38年詩集「あこがれ」を出版、明星派の詩人として知られる。
◎ 山上 憶良 斉明6年生まれ 天平5年没
官人;歌人
大宝元年(701年)遣唐少録に任ぜられ、翌年入唐。帰国後、筑前守の在
任中に大宰権帥の大伴旅人と交友し、大宰府を中心に歌壇を形成した。
「万葉集」に収められた「貧窮問答歌」で知られる。
◎ 渡辺 和博 昭和25年2月広島県生まれ 平成19年2月没
イラストレーター;エッセイスト
東京・四谷の美学校で赤瀬川原平に師事。雑誌「ガロ」の編集長を経て、
フリーのイラストレーター、エッセイストとなる。職業ごとに金持ちと
貧乏人を"マル金""マルビ"に分けて評した「金魂巻」はベストセラーと
なり、"マル金""マルビ"は第1回の日本流行語大賞を受賞した。
(データベース「WHOPLUS」より)
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