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人物・文献情報データベースWHOPLUSの“人物”をテーマにしたブログです!
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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第54回)    坂本あおい
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ググってはいけない?

「難色」という語を検索エンジンGoogle(グーグル)でサーチしたら、検索結
果のトップにあがってきたのは、つぎのような過去の記事だった。

《グーグル、「ググる」の使用に難色》

じつは「男色(ナンショク)」を調べるつもりだったというのは、さておくと
して、この記事は、「google someone(だれかについてググる)」といった一
般動詞としてのGoogle社名の使用を、同社が厳重に取り締まる意向を明らかに
した、と いった内容のもの。「ゼロックスする」などの例のように、一般動
詞化することでブランドの影が薄くなるのを懸念しているらしい。

でも、これはもう手遅れでしょう。ググってみると、各国語でふつうに使われ
ているようすだし、わたし自身も実際にドイツ語版を聞いたことがある。学習
経験者なら想像がつくとおり、「ググった」は「gegoogelt(ゲグーグルト)」。
3つも「g」の文字がはいって言いにくいけれど、シャイな乙女のように口のな
かで発音すると、それらしく聞こえるような。

ところで、わたしのなかではGoogleブランドは存在感を増す一方で、新しいサー
ビスが登場するたびに驚きにのけぞっている。たとえばGoogle Earth(当然、
自分の家をさがした)、ストリートビュー(自分がバーチャルでも方向音痴に
なれることを知った)、その他いろいろ。いや、便利、便利。そんなものは知
らないという方は、どうぞ、ググってみてください。かつて夢見た近未来が、
すでにそこに存在しています。

そして、このところ利用する機会がとみに増えたのが、「現在700万部以上の書
籍の中身を全文検索できる」というブック検索のサービスだ。シェイクスピア
の台詞をいれれば、戯曲まるごとだって出てくるし、数世紀前の書物の中身も
自由自在に見ることができて、感激だ。

けれど、このサービスをめぐっては、出版業界を震撼とさせる動きが進行中。
わたしのような業界の末端にいる者のところにも、この数日のうちに各社より
バタバタと通知が届きだし……。詳しいことは「グーグルブック、和解」など
の語で、これまたググってみてください。いよいよ日本にも大津波が到来か?

さて、こんなにも身近で圧倒的なGoogleだが、みなさんは創業者の名前を知っ
ていますか? ビル・ゲイツ? いえ、もちろんちがいます。ではここでググっ
て、いや、WHOってみるとしましょうか。


◎ ブリン,サーゲイ(実業家 グーグル共同創業者・技術部門社長 )
1973年ロシア生まれ
1995年大学院在学中にラリー・ページと知り合い、インターネットの検索
エンジンの共同研究を始める。'98年検索サービス会社のグーグル(Google)
を設立。'98年~2001年社長、2001年より技術部門・社長。重要度の高い
ページを優先表示する手法でユーザーの支持を獲得し、ヤフー、AOLなど
の大手検索サイトに採用され、グーグルを検索エンジンの業界標準にまで
高める。2004年グーグル・オルグを設立、社会貢献活動を開始

◎ ページ,ラリー(実業家 グーグル共同創業者・製作部門社長) 
米国・ミシガン州生まれ
コンピューター科学の教授である父の影響で、子どもの頃からコンピュー
ターを使い始める。ソフトウエア・デザインの仕事を経て、1998年サーゲ
イ・ブリンと共に検索サービス会社のグーグル(Google)を設立、CEOに就
任。2001年より製作部門社長。高速の検索エンジンを事業化する。2004年
にはグーグル・オルグを設立し、社会貢献活動を開始。スタンフォード大
学博士論文提出志願者
(WHOPLUSより)

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【3】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第53回)    坂本あおい
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日本人が肉の洗礼にあう話

日本人は欧米人などに比べて腸が長く、そのため、肉よりも野菜や魚の消化に
適している、という俗説がある。真偽のほどは知らないが、たしかに、身体の
構造がちがうと実感させられることは多い。

以前、アルゼンチンを旅したのだが、あそこはまさに「肉の国」。ガイドブッ
クにある「わらじのように巨大なビーフステーキ」なるものに、期待と不安を
いだきつつ、現地に乗り込んだのだが――。いやいや、夜ごとテーブルに運ば
れてくるのは、わらじなんていう軟弱なものではなく、ラバーソールなみに分
厚いタフな肉だった。しかも、あちらの習慣で夕飯の時間が遅いために、空腹
のあまり体も胃もダレているところで、肉塊と戦わなければならないのだ。あ
れをペロリと平らげる地元の人たちの胃力たるや!

こうした肉の洗礼を受けて以来、身の丈ならぬ、腸の丈にあったメニューを慎
重に選ぶためにチマチマと知恵を絞るようになったわたしだが、一番いいのは、
とりあえずお店の人に相談することだ。自分の胃袋を指さして「こんなに小さ
い」とアピールすると、たいてい親身になってメニューをアドバイスしてくれ
るし、なぜかサービスが良くなることが多い。一度などは、お店のオーナーと
話がはずんで、一家で夕飯をご馳走になるという幸運もあった。それには、
ちょっとしたオマケもついたのだが――。

河岸をかえてオーナーと食後の一杯を楽しんでいるところに、「日本人旅行者
がゴネている」と店から連絡がはいった。駆けつけると、女の子4人が「だま
された」と言って目を三角にして怒っている。フィレンツェ名物の骨付きステー
キを頼んだはいいが、100グラム単位でいくら、というメニュー表示を見て、
各自が一皿ずつ注文してしまったのだ。しかし、やってきたのは600グラムほ
どの肉の塊が人数分と、そのぶんのお勘定。驚愕の肉を目の前にして、だまさ
れたという心境になったのも、無理はないのかもしれない。

ところで、肉の思い出にひたりつつ《WHO》で遊んでいるうちに、大正時代
に本場のソーセージの味を日本に伝えた「胃袋の宣教師」カール・レイモンと
いう人を見つけた。日本人女性との大恋愛、スパイ嫌疑などの苦難。なにやら
冒険の味がしそうだ。《近代日本の先駆者》によると、明治期には、片岡伊右
衛門が外国人から技術を習ってハム・ソーセージ作りをはじめたというし、ま
た、芥川が『鼻』で書いた「細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中
からぶら下って」というのが、西洋のソーセージのことだとすると、ソーセー
ジの存在自体は当時すでに知られたものだったのかもしれない。けれど一般庶
民に受け入れられ、そして、今も連綿とつづくレイモンさんの味とはいったい
どんなものなのだろう? 胃袋と好奇心を満たすためには、「お取り寄せ」を
してみるしかない?


◎ レイモン,カール(ハム・ソーセージ職人)
1894年オーストリア・ハンガリー帝国(現・チェコ領)生まれ 1987年没
父親の仕事を受け継いで食肉製造の道に入る。第一次大戦の従軍経験から欧州
統合の必要性を感じ、のち故郷やベルリンで執筆、演説活動を行う。1919年米
国からの帰途日本に立ち寄り、銀座の缶詰会社に勤務。函館を訪れ、帰国後函
館で知り合った日本人女性と結婚。'25年妻とともに再訪して大野町にハム・
ソーセージ工場を建てる。戦時中は工場の強制買収やスパイ嫌疑などの苦難を
経験。戦後レイモン・ハム・ソーセージ製造所を函館市元町で再開。 '83年に
現役を退き、翌年西ドイツに帰ったが、半年後には函館に戻り永住の地とした。
(WHOPLUSより)

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【3】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第52回)    坂本あおい
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NHKのニュースが気になる

むかし、人前で話をするバイトをしていたことがあるのだが、元NHKの老紳
士が何度か抜き打ちでやってきて、しゃべり方のチェックをしてくださった。
わたしの場合、人に物事を伝えようとするときに、腰をかがめるクセが出るら
しい。放送と日本語のプロらしい的確なアドバイスの数々に、さすがはNHK
出身の人だと敬服したものだ。

そんな経験も手伝ってか、NHKの番組に対しては、つい期待値も高くなる。
とくに夜のニュース番組では第一級のプレゼンテーションが見られるのかと思
いきや――、なんだなんだ! けっこうみんな派手に「腰かがめ」をしているで
はないか。テーブルの前に座っているキャスター、お天気のお姉さん。まあ、
このあたりは自然な身体の動きなので、かえってご愛嬌か。

けれど、どうしても気になってしかたないのが、体言止めの多用や、動詞の省
略といった、日本語のクセだ。具体的にどういうことかというと、《渋谷に猿
が出て、人々がパニックになりました。》という情報を伝えるのに、次のよう
に表現するナレーションが目立つのだ。

《渋谷にあらわれた猿。人々はパニックに。》
《渋谷に猿が出現。人々はパニックです。》

数年前からとみに増えたように思うのだけど、テンポのいいニュースを目指そ
うとしているのだろうか? あるいは、原稿を書く人に、体言止めが大好きな
人がいるのかも?

さらに、最近では省略の技法がますます大胆になっている。たとえば、夜の
ニュースの冒頭では、《渋谷に出現しました!》とか、《人々がパニックで
す!》などといった文の一部のみを投げてくるのだ。なにが出現した? どう
してパニックなった? もはやニュースというよりナゾナゾか。

とはいえ、文句をいいつつ、なぜか見てしまうのが9時台のニュースだ。妙な
抑揚がうるさいとか、今日の服はいいとか、ぶつぶつと勝手な感想をいいなが
ら、けっこう楽しく見ている。でも、なんといっても気になるのは、キャスター
の田口五朗氏の存在だろう。この人の役割はなんなのか? 話しぶりからして、
アナウンサーでないのはわかる。ならば解説者かと思うと、「××してほしい
と思います」とカメラ目線で意見をいったりする。最初は違和感があったけれ
ど、見慣れたせいか、あの人はあれでいいと思うようになった。

ちなみに田口氏とはこんな経歴の人だ。と思ったが、あれ? WHOにはデー
タがない? では、かわりに大昔のキャスターのデータを載せておこう。番組
のオープニングで毎晩律儀に「高島肇久(はつひさ)です」と名乗っていた男
性を、みなさんは憶えてますか? この人も気になる存在だったなあ。

◎ 高島 肇久(たかしま はつひさ)
昭和38年NHKに入り、報道局外信部、ワシントン支局(6年間)、ロンドン支局
長(4年間)などを経て、63年報道局国際部長。この間、アポロ計画、ウォーター
ゲート事件などの取材を担当した。平成2年4月から「ニュース21」アンカー
マン兼編集長をつとめ、3年報道局長、4年海外企画局長、5年報道・解説委員
長を経て、8年9月放送総局特別主幹。湾岸戦争時の報道への評価は高い。12年
9月国連広報センター所長、14年7月外務省外務報道官。17年8月退任。18年学
習院大学客員教授、20年日本国際放送社長
(WHOPLUSより)


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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第51回)    坂本あおい
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新型インフルエンザは、恐ろしいです

 急に懐かしくなって、母校の公式サイトをのぞいてみた。むかしの校舎のよう
 すを見るつもりが、まっさきに目に飛び込んできたのは【重要】という警告調
 の文字。なになに――

  (新型インフルエンザが)国内で1人でも発生が認められた場合は
   幼稚園から大学までを完全休校とします

 「1人でも」とはおおげさでない? しかも、場合によっては、1か月以上の休
 校もあるとか。そんなに休めたら、児童生徒は大喜びだろう。と一瞬思ったも
 のの、これは知れば知るほど恐ろしい病気だ。新型というだけあって、われわ
 れには免疫がないために一気に世界中に広まるおそれがあり、しかも厚生労働
 省の推計では、発生すれば3200万人が感染、64万人が死亡、またアメリカにい
 たっては、感染者の20%が死亡するとの想定で、対策をすすめているというで
 はないか。

 ところで、小さいころ祖母から「家族がスペイン風邪で死んだ」と聞かされた
 ことがある。風邪で死ぬなんて栄養の悪い時代だったのだ、とそのときは思っ
 たけれど、あらためて思えば、それこそが当時の「新型インフルエンザ」だっ
 たわけだ。呼称もいまでは「スペインインフルエンザ」とされ、ある推計によ
 ると、世界では4000万人の死者が出て、その数はなんと、同時期の第一次大戦
 での総死者数を超えるという。

 言葉が適切でないかもしれないが、じつはわたしはスペイン風邪に畏敬の念の
 ようなものを持っていた。電子顕微鏡でしか見えない微小のものが、地球の支
 配者然とした顔の大勢の人間を、それも世界同時多発的に、恐怖におとしいれ
 たのだ。WHOPLUSで検索してみると、たとえばこんな才能もその毒牙の
 犠牲となっている(カッコ内は肩書き、没年齢)。

  大須賀 乙字(俳人、38)
  葛 江月(日本画家、37)
  島村 抱月(評論家;美学者;新劇運動家;演出家、47)

                         (WHOPLUSより)

 日本以外では、オーストリア世紀末の画家、クリムト(55)やシーレ(28)な
 ども、スペイン風邪で他界した。

 白状すると、わたしはスペイン風邪を陰の主役にすえて、世界各地を舞台とし
 た小編をシンクロさせた物語を書いてみたいという野望を持っていた。けれど、
 インフルエンザウイルスのことを調べているうちに、考えが変わってきた。ウ
 イルスは自身のなかで遺伝子組み換えを行うとか、感染を広めるために、あえ
 て宿主をすぐに殺さないように進化するとか、なにやらものすごくホラーだ。
 どうせ書くなら、そっち方面の小説がいいような気もするが、どうだろう。ま
 あ、その前に才能の問題が……。

 上にあげた死亡年齢でもわかるとおり、スペイン風邪の犠牲者は若く健康な人
 に偏る傾向があり、いま、危惧されている新型インフルエンザが流行れば、お
 なじことが予想されるそう。どうぞ、みなさん、正しい情報を得て新旧インフ
 ルエンザに対して万全の防衛を。 

 

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「本日も、風まかせ!」はWHOPLUSメールマガジンに連載中の、
坂本あおいさんによる人気コラムです。

◎ 坂本あおい(サカモト,アオイ) 文芸翻訳家 1971年東京都生まれ
主な訳書に『ねじの回転-心霊小説傑作選-』(創元推理文庫)、『熱い
指、冷たい唇 』(ヴィレッジブックス) 、『誘惑のトレモロ』(二見書房 
ザ・ミステリ・コレクション)、『新アラビア夜話』(光文社古典新訳文
庫)などがある。雑誌他にエッセイを発表するなど“ホソボソ”と活躍中。

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第50回)    坂本あおい
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鬼になって神に会う

人間としてこの世に生をうけた者は、いつかは必ず死ぬ運命にある。そのせい
だろうか、死を表現する言葉はとても多彩だ。なかでも、わたしが好きな表現
は「鬼籍に入る」。鬼が鉛筆なめなめ、あの世にやってきた死者を記録をして
いるのかと想像すると、なんともユーモラスではないか。と思ったら、「鬼」
自体が死者を意味するそうで、死んで過去帳に名前が記入されるという意味だ
とか。つまり、死ぬと仏にも鬼にもなれるわけだ。

もちろん英語の辞書を見ていても、死に関するさまざまな表現に出くわすのだ
けれど、人類共通の定めだけに、わりと日本語と同じ発想だったりする。以下
にいくつかの表現と直訳を載せてみよう。けっこう、ピンときませんか?

answer the call(お召しに応じる)
lay down life's burden (人生の重荷を下ろす)
under the daisies (デイジーの陰)
come to dust (土に還る)
make one's exit (退場する)
join the majority(多数派のひとりとなる)
meet one's Maker(創造主に会う)
cross the river (川を渡る)

この最後の川というのは三途の川を連想させるが、おそらくギリシア神話の冥
界を流れるステュクス川に由来するのだろう。ここにもカロンという底意地の
悪い渡し守がいて、渡し賃を徴収される。

さて、今年もそろそろ終わりだ。ということで、この一年のうちに泉下の客と
なった大勢のうち、天寿をみごとに全うしたとおぼしきご長寿をWHOでさが
してみた。ひとりはオーストラリアの世界最高齢のブロガー、もうひとりはフ
ランスの歴史の生き証人。経歴を読むと、まさに惜しまれつつの退場といった
感じだ。今頃は、先立った多数の友人たちとあの世で再会を喜んでいるだろう
か。それとも、草葉の陰から、あるいは空のお星さまとなって、この世を見守っ
ているだろうか。

◎ ライリー,オリーブ(Riley,Olive)
世界最高齢のブロガー 没年齢=108歳 
2007年2月107歳でブログを開設。子育てや、バーで働いていたことなどの回
想、1900年代初期の洗濯の仕方などを紹介し、鮮明な記憶を元に綴った文章
が人気を呼ぶ。2008年7月に亡くなるまで70回以上掲載し、米国やロシアなど
世界中に読者がいた

◎ ポンティセリ,ラザール(Ponticelli,Lazare)
第一次大戦に従軍し生存していた唯一のフランス人兵士 没年齢=110歳
生計を立てるためイタリアからフランスに移住。1914年第一次大戦が勃発し
た際に年齢を偽り、16歳で外人部隊に入隊。同大戦に従軍し生存していた唯
一のフランスの軍人で、2008年の死去にあたっては国葬が営まれた

(WHOPLUSより)

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第49回)    坂本あおい
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インダストリアル・デザイナーという仕事

10年ほど前になるだろうか。あるとき、見知らぬ大男がいきなり家に訪ねて
きたことがあった。スキンヘッドの西洋人で、鍛えあげられた屈強なタイプ。
どちらかというと怪しげな風貌だが、なぜか、やけにニコニコしている。聞け
ば、どこかの国境でちょっとばかり無理なことをして捕まった経験があり、そ
のとき「同志」だったのが、放浪系旅人のうちの兄だったという。あいにく、
兄はまたべつの旅に出て不在だったが、せっかく住所のメモをたよりに異国か
ら訪ねてきてくれたので、両親とわたしでもてなすことになった。

このオランダ人、職業を聞いてみるとインダストリアル・デザイナーだという。
わたしにとって耳慣れない言葉だったので、つまり、どんな仕事かと質問して
みたが、結局のところあまりよくわからない。とりあえず、インダストリアル
(=工業)のデザイン(=設計)なのだから、なにやら理系っぽい仕事なのか
と適当に納得したのだった。

ところが、最近ようやくピンときた。このほどパソコンを買ったが、おなじメー
カーでも上位モデルはかっこいいが、わたしの身の丈にあった下位モデルは、
微妙にデザインがよろしくない。長年使った洗濯機を買い替えようとしたら、
それまでのスペースにはいる型は、見た目が非常にシャビー(=shabby:みす
ぼらしい)。かといって新型の大きいやつも、妙な形状でまわりの家具になじ
まない。結局、妥協してシャビーなほうを買うことに。

せっかく新しい製品が家にやってきたというのに、ああ、なんだかガッカリ。
さらに、毎日目にし、数年間は使いつづけるものだけに、ガッカリ度も倍増だ。
しかし、なるほど。こういうガッカリを生み出したり、解消してくれたりする
のが工業デザイナーだったのか! WHOPLUSの書誌情報のなかに、こん
なわかりやすい一文があった。

『インダストリアルデザイナーになるには』(なるにはBOOKS)
石川弘著
私たちが日常使っているすべての工業製品にインダストリアルデザイナー
はかかわっています。みんな、知らず知らずのうちに、お世話になってい
るわけです。(後略)

ドイツなどでは、家電のような工業製品は美しくないという意識があるのか、
すべて棚におさめてしまう人をけっこう見た。キッチンの扉の裏がパン切り機
になっていたり、テレビや冷蔵庫がすっぽり棚におさまっていたり。しかし日
本の狭い住宅では、なかなかこうはいかない。なので出しっぱなしでも美しく、
インテリアにもなじむ製品をじゃんじゃん作ってほしいものだ。

ということで、世のインダストリアル・デザイナーさんたち、これまであなた
がたの仕事のありがたみを理解していなくて、ごめんなさい。製品の性能と美
を橋渡しする、なんて意義のあるすばらしい職業でしょう。今後ともおおいに
活躍して、わたしたちの生活を良デザインのもので満たしてくださいますよう
に。

◎ 栄久庵憲司(インダストリアルデザイナー)
昭和4年広島県出身
昭和25年東京芸術大学図案科に入学。工業製品の量産品にも美が与えられる
インダストリアルデザインに開眼、在学中より各種デザインコンクールに入
選するなど活躍。31年日本貿易振興会(ジェトロ)デザイン留学生として米
国に留学。帰国後、32年GKインダストリアルデザイン研究所を設立し、所長
となる。現在、株式会社GKデザイン機構代表取締役会長、他GKデザイングル-
プ代表。

◎ 喜多俊之(工業デザイナー)
昭和17年大阪生まれ
昭和42年アルミ加工会社を退職して工業デザイナーとして独立。44年イタリ
ア・ミラノへ渡り、45年椅子のデザインで注目される。48年IDKデザイン研
究所設立。55年国際家具フェアに「ウインク・チェア」を発表、大ヒットと
なり、 56年日本人で3人目となるニューヨーク近代美術館の永久展示品に選
ばれた。
(WHOPLUSより)


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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第48回)    坂本あおい
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文明について考えるサル

わたしのパソコンは、なぜかよく壊れる。先々週にも使っている最中に、急に
ウンともスンともいわなくなった。重要なデータはバックアップをとってあっ
たからいいものの、困るのはデスクトップに書き散らかしていた備忘のメモが
パアになったことだ。どれもたいした情報ではないとはいえ、塵も積もれば山
となる、でこれが案外ショックで泣けてくる。

機械にたよらずに憶えておけばいいのだが、最近は自分の頭がめっきり信用な
らない。いっそのこと自分の頭用の「外付けハードディスク」がほしい今日こ
のごろだ。ついでに、ここぞという外食の日には「外付け胃袋」もあるとたく
さん食べられてうれしい。あと、増える一方のカードやパスワードを管理する
のも難儀なので、認証チップを指に埋め込んでもらえると、楽チンでよし。そ
れから、脳から直接データの読み書きのできるケーブルもほしいな。一瞬にし
て本一冊が読めたり、思ったことがそのまま文字テキストになったら、どんな
に便利だろう!

そうそう、DNAの二重らせん構造の理論でおなじみのジェームズ・ワトソン
博士は、「2007年米バイオ企業が解読した自身のゲノムを記録したハードディ
スクを受け取った」のだそうだ。こうしたデータを保存しておけば、自分に不
具合が起こったときに、リカバリやフォーマットができて便利かも? そうい
う場合に「先祖返り」のオプションが選択できたら、ちょっと楽しそうだ。わ
たしは器用に物をつかめるサルの尻尾がほしいな。

と、勢いにのってSF風な科学バンザイ調で書いたものの、身近なところにか
ぎっていうと、じつはわたしは過度な文明化に戦々恐々としている。それはこ
んな出来事がきっかけだった。

以前、うちの老朽マンションの玄関をオートロックに変えようという話が出た
が、高齢の人々の熱烈な反対によって却下となった。新式の郵便受けにすら手
こずるのに、とうてい手に負えなくて恐ろしいというのだ。たしかに、文明に
ついていけない人にとっては、電気仕掛けとセキュリティという恩恵のせいで、
自宅から出入りすることさえ不自由でわずらわしいものとなる。その便利さと
息苦しさの関係に、某社の「V」のつくOSを連想するのはわたしだけだろう
か。

環境のバージョンアップについていく能力、気力を失ったものは、取り残され
て「レガシー」になっていく。いずれ自分もそうなるのかと思うと、ガチャガ
チャとまわすチャンネル、ボタンが4つくらいしかない暖房機器、スカスカの
エンジンルーム、そんな昔の単純さこそ未来の夢の姿にも思えてくるのであっ
た。

◎ ワトソン,ジェームズ(分子生物学者)
1928年米国イリノイ州シカゴ生まれ
インディアナ大学で生物学を研究、デンマーク、英国での留学・研究生活を
経て、'53年カリフォルニア工科大学上級研究員。'56年ハーバード大学に移
り、'61~67年教授。'68年からコールド・スプリング・ハーバー研究所所長、
'94年より同会長。'89年国立衛生研究所(NIH)のヒューマン・ゲノム研究セ
ンター所長となりプロジェクトリーダーをつとめる。この間、'53年にフラ
ンシス・クリックと共同研究で遺伝子DNAの二重らせんモデルを発表、遺伝
物質の複製の仕組みを解明した。この業績により、'62年クリック、M.ウィ
ルキンズと共にノーベル医学生理学賞を受賞。
(WHOPLUSより)


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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第47回)    坂本あおい
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大麻について調べてみた

何かとお騒がせな角界だが、このほど、ついに大麻問題まで出てしまった。た
どたどしさの残る日本語で相撲への未練を語るのを見ると、再度チャンスをあ
げたい気分になるが、やはりダメですよ、大麻は。栽培と所持が法律で禁止さ
れてますから。えっ、では使用は? 大麻はどうも扱いがわかりにくくて困る。
勝新のようにパンツに入っていると逮捕されるのに、オランダみたいに事実上
合法といっていい国もある。いったい、なんなんですか、あなたは? 広辞苑
によれば、大麻とはこういうものらしい。

アサから製した麻薬。栽培種の花序からとったものをガンジャ、野生の花序や
葉からとったものをマリファナ、雌株の花序と上部の葉から分泌される樹脂を
粉にしたものをハシシュといい、総称して大麻という。喫煙すると多幸感・開
放感があり幻覚・妄想・興奮を来す。

なぜ合法や黙認の国があるのかというと、酒やタバコ以上に禁止する理由がな
いとか、より有害な麻薬が出回るのをふせぐ効果があるとか、理由はいくつか
あるようで、現に世界には擁護派も多く、有力な政治家のなかにも「マリファ
ナや妊娠中絶の自由化を唱える(WHOより)」マクガヴァン元アメリカ上院議員
のような人もいる。余談だが、カリフォルニア州知事のシュワちゃんは「かつ
てマリファナを吸ったが、あれは麻薬ではない」と雑誌のインタビューでポロ
リと言ってしまったとか。

しかし、もちろん厚生労働省所管の専門の団体は「社会問題の元凶ともなる」
と一刀両断(くわしくは「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」のサイトへ)。
乱用の害を読むと、大麻はけっこう怖いもののようである。

ところで、大麻を食べ物から取る方法があるのはご存知だろうか。海外のネッ
ト書店で検索すると、ふつうにマリファナ料理のレシピ本が出てくるのでびっ
くりする。また、辞書などでも「マリファナ入りチョコレートケーキ」という
ものを見かけることがあるが、そのお菓子の背景には、「ブラウニー・メアリー」
として知られる人物がいるらしい。はたして、その食べ物の実体とは?

◎ ラスバン,メアリー・ジェーン
エイズが発見されて間もない1980年代、マリファナがエイズ患者の食欲増進
や痛みを緩和する効果があると知り、マリファナ入りのチョコレートをサン
フランシスコ市内の病院でエイズ患者に配る。何度も逮捕されるが、'96年
全米で初めてカリフォルニア州で成立した医療用マリファナ合法化に大きく
貢献した。
(WHOPLUSより)

アサはじっと生えているだけだが、人間の扱い方ひとつで善にも悪にも、薬に
も害にもなるものだとわかった。結局、素人のわたしに言えるのは、社会の一
員として、その土地の法律には従いましょう、ということだけのようだ。

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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第46回)    坂本あおい
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国歌が気になる、この季節

この前、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」のことで調べものをした。ビート
ルズの歌などにも取り入れられている、あの意気揚々としたメロディは、多く
の人の知るところだろう。ところがこれ、歌詞がすごい。「血塗られた軍旗」
「喉を掻き切る」「汚れた血で我らの田畑を満たせ」。勇ましいを通り越して
過激だ。けれども、フランス革命当時に作詞作曲されたという経緯を知って、
なるほどと納得した。本国でも、時代にそぐわない残酷な歌詞に反発する向き
もあるようだが、それもまた納得。

さて、おりしもオリンピックシーズン。日本選手の活躍のおかげで「君が代」
を聞く機会も多い。わたしの知人のヨーロッパ人は、あのメロディを「悲しい、
悲しい」と言って面白がっていたが、ネットでよその国の人の感想を見てみる
と、案外、美しいと好評のようだ。本気で言っているのかは疑問だが「短調で
短いのがいい!」とのお褒めの言葉も。たしかに個性的という意味では、各国
国歌のなかでも際立っているかもしれない。少なくともフェントン作曲の初代
「君が代」よりは、断然印象的だ。

しかし、国内ではなにかと論争を呼ぶ「君が代」。なので、もしも新しい国歌
をつくることになったら、どんなものがいいか、イタズラで考えてみた。歌詞
は、あまり言葉を連ねると、思わぬ批判を受ける危険性があるので、「ああ、
松島や」方式でいこう。曲のほうは、WHOPLUSで日本の作曲家を調べて
みたが、大勢いすぎてよくわからない。短くても印象的な音楽をめざすという
ことで、この際、CM音楽を多く手がける小林亜星さんにお願いするとか?

◎小林 亜星(こばやし あせい)
昭和36年妹の川村みづえがイラストを手がけたレナウンCM「イエイエ娘」の
音楽を担当、2本の低音ベースをハモらせたり、リフに歌声を乗せるなど漸新
なサウンドが大ヒットし、一躍人気作曲家となる。CMソング、アニメ・ドラ
マのテーマソングを多く作曲。主な作品に「ふりむかないで」「北の宿から」
「魔法使いサリー」「ピンポンパン体操」など。
(WHOPLUSより)

やはり、ややふざけすぎ? とはいえ、いろんな国歌の背景を見ていると、ど
うでもいいじゃないか、という大らかな気分になってくる。なにしろ、外国の
酒飲み歌を国歌にしたという国もあるのだ。誇り高く、希望に満ちあふれる、
あのアメリカ国歌「星条旗」だ。あれは英米戦争の体験に基づく詩を、当時の
敵国イギリスの社交クラブに端を発する歌にのせたものらしい。

国歌のあるところに歴史あり。調べるほどに面白い事実が出てくるので、夏休
みの自由研究にいかがですか?


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