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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第49回) 坂本あおい
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インダストリアル・デザイナーという仕事
10年ほど前になるだろうか。あるとき、見知らぬ大男がいきなり家に訪ねて
きたことがあった。スキンヘッドの西洋人で、鍛えあげられた屈強なタイプ。
どちらかというと怪しげな風貌だが、なぜか、やけにニコニコしている。聞け
ば、どこかの国境でちょっとばかり無理なことをして捕まった経験があり、そ
のとき「同志」だったのが、放浪系旅人のうちの兄だったという。あいにく、
兄はまたべつの旅に出て不在だったが、せっかく住所のメモをたよりに異国か
ら訪ねてきてくれたので、両親とわたしでもてなすことになった。
このオランダ人、職業を聞いてみるとインダストリアル・デザイナーだという。
わたしにとって耳慣れない言葉だったので、つまり、どんな仕事かと質問して
みたが、結局のところあまりよくわからない。とりあえず、インダストリアル
(=工業)のデザイン(=設計)なのだから、なにやら理系っぽい仕事なのか
と適当に納得したのだった。
ところが、最近ようやくピンときた。このほどパソコンを買ったが、おなじメー
カーでも上位モデルはかっこいいが、わたしの身の丈にあった下位モデルは、
微妙にデザインがよろしくない。長年使った洗濯機を買い替えようとしたら、
それまでのスペースにはいる型は、見た目が非常にシャビー(=shabby:みす
ぼらしい)。かといって新型の大きいやつも、妙な形状でまわりの家具になじ
まない。結局、妥協してシャビーなほうを買うことに。
せっかく新しい製品が家にやってきたというのに、ああ、なんだかガッカリ。
さらに、毎日目にし、数年間は使いつづけるものだけに、ガッカリ度も倍増だ。
しかし、なるほど。こういうガッカリを生み出したり、解消してくれたりする
のが工業デザイナーだったのか! WHOPLUSの書誌情報のなかに、こん
なわかりやすい一文があった。
『インダストリアルデザイナーになるには』(なるにはBOOKS)
石川弘著
私たちが日常使っているすべての工業製品にインダストリアルデザイナー
はかかわっています。みんな、知らず知らずのうちに、お世話になってい
るわけです。(後略)
ドイツなどでは、家電のような工業製品は美しくないという意識があるのか、
すべて棚におさめてしまう人をけっこう見た。キッチンの扉の裏がパン切り機
になっていたり、テレビや冷蔵庫がすっぽり棚におさまっていたり。しかし日
本の狭い住宅では、なかなかこうはいかない。なので出しっぱなしでも美しく、
インテリアにもなじむ製品をじゃんじゃん作ってほしいものだ。
ということで、世のインダストリアル・デザイナーさんたち、これまであなた
がたの仕事のありがたみを理解していなくて、ごめんなさい。製品の性能と美
を橋渡しする、なんて意義のあるすばらしい職業でしょう。今後ともおおいに
活躍して、わたしたちの生活を良デザインのもので満たしてくださいますよう
に。
◎ 栄久庵憲司(インダストリアルデザイナー)
昭和4年広島県出身
昭和25年東京芸術大学図案科に入学。工業製品の量産品にも美が与えられる
インダストリアルデザインに開眼、在学中より各種デザインコンクールに入
選するなど活躍。31年日本貿易振興会(ジェトロ)デザイン留学生として米
国に留学。帰国後、32年GKインダストリアルデザイン研究所を設立し、所長
となる。現在、株式会社GKデザイン機構代表取締役会長、他GKデザイングル-
プ代表。
◎ 喜多俊之(工業デザイナー)
昭和17年大阪生まれ
昭和42年アルミ加工会社を退職して工業デザイナーとして独立。44年イタリ
ア・ミラノへ渡り、45年椅子のデザインで注目される。48年IDKデザイン研
究所設立。55年国際家具フェアに「ウインク・チェア」を発表、大ヒットと
なり、 56年日本人で3人目となるニューヨーク近代美術館の永久展示品に選
ばれた。
(WHOPLUSより)
【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第49回) 坂本あおい
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インダストリアル・デザイナーという仕事
10年ほど前になるだろうか。あるとき、見知らぬ大男がいきなり家に訪ねて
きたことがあった。スキンヘッドの西洋人で、鍛えあげられた屈強なタイプ。
どちらかというと怪しげな風貌だが、なぜか、やけにニコニコしている。聞け
ば、どこかの国境でちょっとばかり無理なことをして捕まった経験があり、そ
のとき「同志」だったのが、放浪系旅人のうちの兄だったという。あいにく、
兄はまたべつの旅に出て不在だったが、せっかく住所のメモをたよりに異国か
ら訪ねてきてくれたので、両親とわたしでもてなすことになった。
このオランダ人、職業を聞いてみるとインダストリアル・デザイナーだという。
わたしにとって耳慣れない言葉だったので、つまり、どんな仕事かと質問して
みたが、結局のところあまりよくわからない。とりあえず、インダストリアル
(=工業)のデザイン(=設計)なのだから、なにやら理系っぽい仕事なのか
と適当に納得したのだった。
ところが、最近ようやくピンときた。このほどパソコンを買ったが、おなじメー
カーでも上位モデルはかっこいいが、わたしの身の丈にあった下位モデルは、
微妙にデザインがよろしくない。長年使った洗濯機を買い替えようとしたら、
それまでのスペースにはいる型は、見た目が非常にシャビー(=shabby:みす
ぼらしい)。かといって新型の大きいやつも、妙な形状でまわりの家具になじ
まない。結局、妥協してシャビーなほうを買うことに。
せっかく新しい製品が家にやってきたというのに、ああ、なんだかガッカリ。
さらに、毎日目にし、数年間は使いつづけるものだけに、ガッカリ度も倍増だ。
しかし、なるほど。こういうガッカリを生み出したり、解消してくれたりする
のが工業デザイナーだったのか! WHOPLUSの書誌情報のなかに、こん
なわかりやすい一文があった。
『インダストリアルデザイナーになるには』(なるにはBOOKS)
石川弘著
私たちが日常使っているすべての工業製品にインダストリアルデザイナー
はかかわっています。みんな、知らず知らずのうちに、お世話になってい
るわけです。(後略)
ドイツなどでは、家電のような工業製品は美しくないという意識があるのか、
すべて棚におさめてしまう人をけっこう見た。キッチンの扉の裏がパン切り機
になっていたり、テレビや冷蔵庫がすっぽり棚におさまっていたり。しかし日
本の狭い住宅では、なかなかこうはいかない。なので出しっぱなしでも美しく、
インテリアにもなじむ製品をじゃんじゃん作ってほしいものだ。
ということで、世のインダストリアル・デザイナーさんたち、これまであなた
がたの仕事のありがたみを理解していなくて、ごめんなさい。製品の性能と美
を橋渡しする、なんて意義のあるすばらしい職業でしょう。今後ともおおいに
活躍して、わたしたちの生活を良デザインのもので満たしてくださいますよう
に。
◎ 栄久庵憲司(インダストリアルデザイナー)
昭和4年広島県出身
昭和25年東京芸術大学図案科に入学。工業製品の量産品にも美が与えられる
インダストリアルデザインに開眼、在学中より各種デザインコンクールに入
選するなど活躍。31年日本貿易振興会(ジェトロ)デザイン留学生として米
国に留学。帰国後、32年GKインダストリアルデザイン研究所を設立し、所長
となる。現在、株式会社GKデザイン機構代表取締役会長、他GKデザイングル-
プ代表。
◎ 喜多俊之(工業デザイナー)
昭和17年大阪生まれ
昭和42年アルミ加工会社を退職して工業デザイナーとして独立。44年イタリ
ア・ミラノへ渡り、45年椅子のデザインで注目される。48年IDKデザイン研
究所設立。55年国際家具フェアに「ウインク・チェア」を発表、大ヒットと
なり、 56年日本人で3人目となるニューヨーク近代美術館の永久展示品に選
ばれた。
(WHOPLUSより)
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