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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第51回) 坂本あおい
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新型インフルエンザは、恐ろしいです
急に懐かしくなって、母校の公式サイトをのぞいてみた。むかしの校舎のよう
すを見るつもりが、まっさきに目に飛び込んできたのは【重要】という警告調
の文字。なになに――
(新型インフルエンザが)国内で1人でも発生が認められた場合は
幼稚園から大学までを完全休校とします
「1人でも」とはおおげさでない? しかも、場合によっては、1か月以上の休
校もあるとか。そんなに休めたら、児童生徒は大喜びだろう。と一瞬思ったも
のの、これは知れば知るほど恐ろしい病気だ。新型というだけあって、われわ
れには免疫がないために一気に世界中に広まるおそれがあり、しかも厚生労働
省の推計では、発生すれば3200万人が感染、64万人が死亡、またアメリカにい
たっては、感染者の20%が死亡するとの想定で、対策をすすめているというで
はないか。
ところで、小さいころ祖母から「家族がスペイン風邪で死んだ」と聞かされた
ことがある。風邪で死ぬなんて栄養の悪い時代だったのだ、とそのときは思っ
たけれど、あらためて思えば、それこそが当時の「新型インフルエンザ」だっ
たわけだ。呼称もいまでは「スペインインフルエンザ」とされ、ある推計によ
ると、世界では4000万人の死者が出て、その数はなんと、同時期の第一次大戦
での総死者数を超えるという。
言葉が適切でないかもしれないが、じつはわたしはスペイン風邪に畏敬の念の
ようなものを持っていた。電子顕微鏡でしか見えない微小のものが、地球の支
配者然とした顔の大勢の人間を、それも世界同時多発的に、恐怖におとしいれ
たのだ。WHOPLUSで検索してみると、たとえばこんな才能もその毒牙の
犠牲となっている(カッコ内は肩書き、没年齢)。
大須賀 乙字(俳人、38)
葛 江月(日本画家、37)
島村 抱月(評論家;美学者;新劇運動家;演出家、47)
(WHOPLUSより)
日本以外では、オーストリア世紀末の画家、クリムト(55)やシーレ(28)な
ども、スペイン風邪で他界した。
白状すると、わたしはスペイン風邪を陰の主役にすえて、世界各地を舞台とし
た小編をシンクロさせた物語を書いてみたいという野望を持っていた。けれど、
インフルエンザウイルスのことを調べているうちに、考えが変わってきた。ウ
イルスは自身のなかで遺伝子組み換えを行うとか、感染を広めるために、あえ
て宿主をすぐに殺さないように進化するとか、なにやらものすごくホラーだ。
どうせ書くなら、そっち方面の小説がいいような気もするが、どうだろう。ま
あ、その前に才能の問題が……。
上にあげた死亡年齢でもわかるとおり、スペイン風邪の犠牲者は若く健康な人
に偏る傾向があり、いま、危惧されている新型インフルエンザが流行れば、お
なじことが予想されるそう。どうぞ、みなさん、正しい情報を得て新旧インフ
ルエンザに対して万全の防衛を。