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■ 知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第13回)坂本あおい
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『ハロウィンと銃とアメリカと』
季節なのでWHOPLUSに「ハロウィン」のキーワードを入れてみたら、
悲しい事件を思い出させられた。「トピック:米国で誤認がもとで射殺された
留学生」服部剛丈くんの事件である。
仮装してハロウィンのパーティにでかけた服部くんは、間違った家を訪ねて
しまう。予定外の来訪者に警戒した家の主が、銃を向けて「フリーズ(動くな)
!」と言うが、服部くんには彼の真意が伝わらず、さらに近づいていって射殺
された(1992.10.17)。
似たような事件も見つけた。俳優アンソニー・リーはハロウィン・パーティ
に出席していた。やってきた警察をパーティの余興と勘違いしたリーは、警官
にオモチャの銃を向ける。身の危険を感じた警官はすぐに発砲し、彼を射殺し
た(2000.10.28)。リーの「人物文献」を見てみると、事件は日本でも多少は
取り上げられたようだ。『週刊新潮』の見出しから、相手の警官が新米だった
ことを知り、ますます胸が痛んだ。
恐怖が恐怖をよび、決定的な悪意が介在しないままに殺人が起こる。一瞬の
判断ミスが、無実の人の命を奪うという取り返しのつかない結果をまねく。銃
に頼る社会というのは、殺人の被害者/加害者になる機会を、不必要に増やし
ているものと想像する。
ならば銃を規制すればいい! でも、それが簡単にいかないのがアメリカな
のだ。銃とキリスト教と努力によって国を拓いた歴史をもつアメリカでは、武
器を保持し武装する権利は憲法で保障されている。それに強大な影響力をもっ
て銃規制に圧力をかける、ご存知、全米ライフル協会(NRA)の存在もある。
NRAの公式サイトをのぞいてみると、銃の取り扱いのルールが書いてあっ
た。「つねに銃口が安全な方向に向いていることを意識しましょう」、「人が
いる場所に向けて撃ってはいけません」エトセトラ。そう、間違っても「人に
向けてはいけない」のだ。「自分や大事な人を守るには銃が必要だ」という同
協会の恐怖をあおる主張との矛盾が、なんとも皮肉だ。自分の身を守るとき、
その銃口の先にはいったい何があるというのだろう?
サイト上のニュースによると、NRAは、ハリケーン被災地の問題にも首を
つっこんでいる。ルイジアナ州イースト・バトンルージュの郡保安官は仮設住
宅を開放するにあたり、安全確保のため銃の持込を禁止したいと当局に申し入
れた。これに対しNRAは、無法地帯と化したニューオーリンズの例を見れば、
自己防衛のために銃が必要なのは明らかで、そうした当然の権利を侵害する行
為に対してNRAは黙ってはいないと息巻いている。また、今回の経験により
「リメンバー・ニューオーリンズ」なる新たなスローガンを打ち立てて、今後
も銃の必要性を訴えていく模様だ。
ところで、ルイジアナのバトンルージュ? 聞いたことがある地名だと思っ
たら、めぐりめぐって、服部くんの事件の土地にもどってきたのだった。何は
ともあれ、銃、それに天災、人災により命を落とされた方々のご冥福をお祈り
します。
う本を読んでいるのだが、物語のあっちこっちに諸外国の文学作品の引用
が散見するコムズカシイ本なのである。
登場人物達が、あーでもない、こーでもないと高尚な話をしているので、
話題についていけない(夏)は、「へー、そうなんだあ。」と相槌をうつ
ばかりで、ちっとも読み進まない。しかたがないから「?」と思った引用
作品が出てくると、そこで読むのを中断して、いっこいっこ、調べてみる
わけだ。しかしまあ付け焼刃で歯がたたない。そもそもそんなことをして
いたら、本来の物語の流れとか行間を楽しむ余韻がぜーんぜんないんであ
る。世の中には、知的素養があることで2倍、3倍楽しめるジャンルとい
うものがあるのだなあと、しみじみ感じずにはいられない。そんな素養の
ある人が心底うらやましく、また己のあやふやな知識を嘆くばかりである。
(夏)
■ 新着のカタマリ ~WHO's new?~
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「あ、このひと新しい!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
さて、今回は「話題のカタマリ」ならぬ「新着のカタマリ」をお届けします。
9月~10月に更新した著名人から、WHO編集部が選んだ4人をピックアッ
プ。
* * *
◎ 富野由悠季(アニメーション作家)
言わずと知れたアニメ界の巨匠。10/29から映画「機動戦士ZガンダムII
恋人たち」が公開。内外の話題作を数多く上映することで知られる東京
国際ファンタスティック映画祭2005での上映も。(2005.9.12)
◎ 安東浩正(冒険家)
昨年の植村直己冒険賞を受賞した冒険家。自転車で極地を走破する“冒
険サイクリスト”。(2005.9.14)
◎ 鈴木馨祐(衆院議員 自民党)
昭和52年生まれの若き国会議員。なにかとお騒がせの某・初当選議員(26
歳)には及ばないものの、28歳での初当選を果たす。(2005.10.3)
◎ 佐野眞一(ノンフィクション作家 ジャーナリスト)
日本を代表するジャーナリスト。近著にJR西日本脱線転覆事故など6つ
の事件・事故を取り上げた「響きと怒り―事件の風景・事故の死角」
(日本放送出版協会)がある。(2005.10.5)
※( )内の日付はご本人によるプロフィール回答年月日です。
気になる人物はWHOでチェックしてね!
品保存用の透明なタッパーに、あるものを適当に詰め込んで持参している。
ちょっと味気ない気もするが、まあ胃にはいればいっしょである。
その透明タッパーを眺めていて、ふと兄が作っていたお弁当を思い出した。
豚の三枚肉にしょうゆをかけてさっといため、そこに冷ごはんを投入、塩・
コショー・七味唐辛子で味付けしただけという実に大胆かつシンプルな炒飯
弁当である。おかずはもちろんナシ。米のみ。
中学生であった兄は、所属していたサッカー部で練習試合があるというと、
この炒飯を透明なタッパーにぎっしりつめて、元気よく「いってきまーす」
と出かけていったものである。
その大胆かつシンプルな炒飯はサッカー部で大ブームを呼んだ。気がつくと
兄の名字をとって「オクムライス」と名づけられるまでの地位を得ていたの
である。先輩からも頼まれて2人前、3人前と作って持っていっていたよう
だ。男子中学生が作るB級ですらないグルメ。今度作ってみようかな…(と
は思わない)
(夏)
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■ 話題のカタマリ 第19回 ジャニーズ、早稲田に行く。
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◆ 演劇をする人
高校時代の親友は、演劇部で裏方の仕事をしている人だった。裏方の仕事と
ひとくちに言っても、地方の女子高の弱小演劇部ゆえ、彼女がひとりで何役
もこなしている状態。ヘアメイクからはじまって、舞台衣装の縫製、大工仕
事、経理、スポンサー探し、チラシ配り、他校との渉外…などなど、他に部
員はいないのかい? というぐらい節操のない状態になっていた。
それにしても、どれもこれも器用に、またなんといっても本人が楽しそうに
こ仕事をこなしていたのが印象的だった。そんなわけで、スーパー裏方さん
である彼女は、私の憧れの人でもあったのだが、そのせいかどうかわからな
いけれど「演劇やってます(した)」という人に会うと、何となく好感を抱
いてしまう。
◆ 男闘呼組、早稲田へ行く。
そんな若干かたよりぎみの演劇への愛情をもつ私だが、最近ちょっと気にな
るニュースが。すでにご存知の方も多いと思うけれど、ジャニーズ事務所が
早稲田大学とタッグを組んで舞台をやるのだという。これも産学連携のひと
つ? ショー・ビジネスのプロ、ジャニーズ事務所とのタッグということで、
大学側の期待も大きいんだとか。
さて、その舞台に関わるジャニーズアイドルは誰なのか? それは、元男闘
呼組の岡本健一である。脚本の選考からキャストとしての出演も検討されて
いる。
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◎ 岡本健一 俳優 昭和44年 東京都生まれ
昭和59年ジャニーズ事務所に入り、60年にCMでデビュー。同年5月ドラマ「サ
ーティーン・ボーイ」(TBS系)で主人公の少年・次郎に抜擢された。同年男闘
呼組を結成、「DAYBREAK」でレコードデビュー。単なるアイドル・グループ
ではなく各人が楽器を演奏するバンドとして人気を呼ぶ。グループで映画「ロ
ックよ、静かに流れよ」に主演。ヒット曲に「秋」「TIME ZONE」など。
一方、個人として、平成元年蜷川幸雄演出の「唐版・滝の白糸」、2年「ペー
ル・ギュント」、「蜘蛛女のキス」「品川心中」などに出演。5年男闘呼組は
グループ活動を停止。以後、俳優として活動。他の出演作にテレビ「独眼龍政
宗」「秀吉」「風の刑事・東京発」「不機嫌な果実」「必要のない人」「恋愛
中毒」「仔犬のワルツ」、映画「プライベート・レッスン」「あいつ」「ピカ
☆ンチ」舞台「本郷菊富士ホテル」「かもめ」「月ノ光」「海の沸点」「ラパ
ン・アジールに来たピカソ」「セツアンの善人」「嵐が丘」「夜叉ケ池」「タ
イタスアンドロニカス」「CABARET」「劇場の神様―極付 丹下左膳」などがあ
る。
<連絡先> ジャニーズ事務所
〒107-0052 東京都港区赤坂8-11-20 (Tel.03-5413-5111)
(データベース「WHOPLUS」より)
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なるほど、アイドル・グループ男闘呼組として脚光を浴び、その後、蜷川幸
雄氏に見出され、舞台俳優に転向。今やジャニーズきっての本格派舞台俳優
に成長し才能を開花、今回の起用につながったということのようだ。
プロフィールといっしょに人物文献をチェックすると、ちょうどアイドル
から俳優への過渡期にある岡本健一を取材した記事があった。
◎ 舞台「ラパン・アジール…」でピカソを演じる岡本健一―「普通」の
感動大切に、アイドルから舞台人へ「僕の軸 崩さない」(この人と60分)
掲載:読売新聞 2000年9月26日(夕刊)p9
またもう少し遡ると作家の村松友視氏による、こんな記事も。
◎「唐版・滝の白糸」―舞台で化けた岡本健一(私ステージの味方です)
村松 友視
掲載:東京新聞 1989年3月30日(夕刊)p5
* * *
才能のある人は美しい。そんな美しい人を見に、秋風が涼しい今日この頃、
舞台に出かけてみるのもいいかもしれないなあ…。「ぴあ」を片手にまた
次回!
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■ 知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第12回)坂本あおい
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『秋刀魚に寄す』
日ごろお世話になっている目黒区図書館の検索端末は、その名も「さんまく
ん」。貸出券には、本を小脇に抱え、シャポーを脱いで挨拶をするお茶目なサ
ンマの絵が描いてある。もちろん、この「さんま」は「目黒の秋刀魚」から取
っているにちがいない。多少、悪乗りの感がなくもないが、わたしはこのキャ
ラクターがけっこう気に入っている。
サンマといえば、今が旬だ。江戸の人は脂が多いと嫌ったけれど、うまみた
っぷり、栄養たっぷりのサンマを食べない手があるだろうか。焼くだけであん
なに美味しいなんて、なんてすばらしい食べ物だろう。
ということで、サンマ賛美の気持ちをこめて、今回は「秋刀魚」のキーワー
ドで検索。食品関係の人のデータがずらりと並ぶにちがいない――と思ったら、
まったく予想をくつがえす結果になった。原因は映画『秋刀魚の味』だ。ヒッ
トしたデータのほとんどが、この映画に携わった人々のものだったのだ。
そうした中に一人、カタカナの名前の人がいた。やはり映画の関係者かと思
ったが、よく見てみると損保の社長さん。ギ・マルシアさんという方で、経歴
は以下の通り。
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◎ ギ・マルシア
実業家 アクサ損害保険社長 1949年7月29日 チュニジア生れ
チュニジア生まれのフランス育ち。パリで小津安二郎監督の映画『東京物語』
『秋刀魚の味』を見て日本に興味を持ち、1984年来日。10年以上製薬会社役
員を務めた後、損保業界へ移り、アクサ損害保険社長に就任
(データベース「WHOPLUS」より)
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なるほど、『秋刀魚の味』が来日のきっかけとなったというわけだ。
日本の作品に感銘を受けたと話してくれる外国人はけっこういる。聞いた中
で、断トツ多く名前が挙がったのは、映画『生きる』と三島の小説『金閣寺』
だ。わたしは当初どちらも未見、未読だったので、彼らの熱い話を聞いてあわ
てて両作品を手に取った次第。今回も同じ展開になりそうだ。小津安二郎の遺
作ということだし、サンマがどのようなかたちで登場するのかも気になるとこ
ろ。近いうちに見てみよう。
ところで、『秋刀魚の味』の英語のタイトルは『An Autumn Afternoon』だ
そうだ。なんだかイメージが違うなあ。ベンチに座る、灰色の瞳の老人たち。
熱をおびない午後の光が、マロニエの落ち葉を穏やかに照らす――。サンマが
連想させる庶民の台所の風景が、どんどん遠のいていく。
ギ・マルシアさんが見たであろうフランス語版は『Le Gout Du Sake(酒の
味)』とのこと。なにやら男の背中をシミジミ感じさせる題ではないか。Sake
なので舞台はいちおう日本。熱燗を手にする会社員二人。「いやあ、ついにね」
「世の中の流れだとはいえ、まさか自分が……」「まあまあ、どうぞ」二人は
猪口の酒をちろりと舐め、しんみりと話を続ける――。
いやいや、ギ・マルシアさんが映画を通して見た日本の光景は、そんなもの
ではなかったはずだ。想像は勝手にふくらむばかり。早いとこ、実物を見なく
ては。
わたしの寝床には、避難用のリュックが置いてある。
先日の地震以来、どうもこのリュックを点検せずにいられない。
リュックの中身を、ざっと書いてみよう。NASA開発のサバイバルボッ
クス(水やら食料やら銀色のシートやらが詰まっている箱)、災害用伝言
ダイヤルのメモ書き、保険証と通帳のコピー、笛、底の厚めの靴、予備の
メガネ、サランラップ、電池などなど…阪神淡路大震災の被災者の方の体
験をもとに自分なりにチョイスしたわけだが、よくもこれだけ欲張ったね、
あんたという品揃え。
どれもこれも必要な気がしてならないが、根本的にこのリュックを持ち上
げることが、かなり困難なことになってきた。これをかついだら、すばや
く逃げることはおろか、完全に足元がおぼつかない…。
こっそり家人のリュックに中身を移す(夏)なのであった。
(夏)
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■ 話題のカタマリ 第18回 ひとくせあるエッセイスト。
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現在のNHK朝のテレビ小説は「ファイト!」である。ヒロインは、本仮
屋ユイカ(もとかりや ゆいか)。WHOPLUSでも、たったひとりしか
収録がない珍しい名字の女優さんだ。さて、今回のカタマリは珍しい名字
ではなく、この朝ドラ「ファイト!」に登場する二人のエッセイストだ。
一人目は(“登場”といっては、語弊があるかもしれないが)ドラマのオ
ープニングやエンディングで使われているイラストを担当している、漫画
家の西原理恵子(さいばらりえこ)。
彼女は、いわずもがなのエッセイ漫画の名手。ギャンブルや、突撃取材な
ど題材にひとくせあるものが多い。その一方で、家族の日常を描いた『毎
日かあさん』(毎日新聞社)などは、ちょっとおかしくて切ない、家族の
絆にふれていて、なるほど朝ドラのテーマとぴったりね、という感じだ。
そしてもうひとりのエッセイストは、俳優・児玉清。
「パネルクイズアタック25」のちょっとくどい司会でおなじみの、あの人
だ。最近はあの司会ぶりをネタにした、健康飲料のコマーシャルにも自ら
出演しているし、なんでもネット上には、児玉清の“言い回し”データベ
ースなるものも存在するんだとか。あなどれない人気だ。
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◎ 児玉清(こだま きよし) 俳優 司会者 エッセイスト 昭和9年東京都生
学習院大学文学部独文学科〔昭和33年〕卒 。大学在学中、演劇グループ・
劇場座を結成。卒業後の昭和33年第13期ニューフェースとして東宝に入社。
36年「別れて生きるときも」で本格デビュー。42年フリーとなり、以後テ
レビで活躍。日本テレビ「花は花嫁」、TBS「ありがとう」などのホーム
ドラマで人気を得る。49年から「パネルクイズアタック25」の司会をつと
める。
芸能界屈指の読書家としても知られ、NHKの本格書評番組「BSブックレビュ
ー」の司会を担当するほか、新聞・雑誌にエッセイやコラムを寄稿。翻訳
小説の文庫解説なども手がける。
他の出演に映画「黒い画集」、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージ
ック」、テレビ「山河燃ゆ」「武田信玄」「ラストダンス」「HERO」など。
一方、青春時代から切り絵を趣味とし、平成16年そのノウハウを「たった
ひとつの贈りもの」にまとめ出版。他の著書に「寝ても覚めても本の虫」
がある 。放送作家協会賞演技者賞受賞。
<連 絡 先> 児玉清事務所
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷3-55-5 (TEL/FAX 03-3470-0322)
(データベース「WHOPLUS」より)
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無類の本好きというあたりから、エッセイストとしての活動も読み取れる
が、プロフィールの後半に突如、“切り絵”についての記述が登場するの
が、彼のひとくせあるところ。
朝ドラ「ファイト!」でも、児玉清演じる老舗旅館の主人が、こどもに
「師匠!」と呼ばれ、切り絵を教えているシーンが多用されていた。あの
シーンには、こういう伏線があったのか…今さらながらに知るのである。
児玉清の新たな魅力を発見したところで、また次回!
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■ 知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第11回)坂本あおい
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『名著誕生のめでたい瞬間』
先日、某出版社のK編集長と、文芸界のニッチ市場をになう作家N氏とと
もに食事をする機会があった。オープンキッチンから流れてくる熱気と、な
らんだ空き瓶が物語る酒量のせいで、頭が少し朦朧となっていたので、どう
してそういう話になったのかは、憶えていない。なにしろ気がついたら、二
人が、詩人ダウスンの新書本を作る話で、大いに意気投合していたのである。
となりのN氏の頭の中で、ペンがすらすらと走る音がする。
「もう章立てを考えました。これは名著になりますゾ」
「では明日ファックスしてください。いやあ、まさに名著です」
大の男が二人して、笑顔ではしゃいでいる。しまいには、ダウスンの詩を
つけたディーリアスの曲をうたいだす始末。
傍で聞いていたわたしは、つい言ってしまった。「いやいや、これは、お
めでたいですね。つまり、ダブル・ミーニングで」
この二人、知識の量が半端なく、彼らの会話の森の中で、わたしはしばし
ば迷子になってしまう。この時も、WHOPLUSがいま使えれば、と何度
思ったことか。いつの時代の、どこの何者かがわかれば、少なくともそれが
道しるべになるのに。恥ずかしながらというべきか、漫然と生きている凡人
として当然というべきか、実はわたしは、ダウスンもディーリアスもよく知
らなかった。
ちなみにダウスンは『人物レファレンス事典』によると、以下のとおり。
Dowson,Ernest Christopher (19世紀)1867-1900
イギリスの詩人,短篇小説家。短篇集『ジレンマ』(95),
『詩歌集』(96),など。
聞いたり調べたりしたところによると、ミッチェルの『風と共に去りぬ』
にはもともと「Tomorrow Is Another Day」という仮題がつけられていたが、
最終的にダウスンの詩の一節からとって、あの有名な「Gone with the Wind」
に落ち着いたらしい。同じように、『酒と薔薇の日々(Days of Wine and
Roses)』というのも、ダウスンの詩からの引用だという。それを知って、
ようやくダウスンへの興味が湧いてきた。悲恋、酒、早死。N氏とK編集長
によれば、詩人はかくあるべし、という生き様をした人物だったそうだ。
その翌日、章立てを確認したK編集長から、わたしのもとへメールが送ら
れてきた。曰く、「すでに名著の貫禄ありです」と。本当にこの本が出版さ
れることになるかは、まだナゾだ。でも、もしいつの日か、詩人ダウスンに
ついて書かれた新書をどこかで目にすることがあったら、是非、手にとって
読んでみていただきたい。それはきっと、名著ですゾ。
◎ 坂本あおい(サカモト,アオイ) 1971年東京都生まれ。
文芸翻訳家。主な訳書に『アイス・ストーム』『ねじの回転 -心霊
小説傑作選-』(創元SF文庫)がある。雑誌他にエッセイを発表す
るなど“ホソボソ”と活躍中。
⇒ 次回は『わが家にWHOPLUSがやってきた』(丸山タケシ)です!