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  ■ 知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第11回)坂本あおい
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 『名著誕生のめでたい瞬間』


  先日、某出版社のK編集長と、文芸界のニッチ市場をになう作家N氏とと
 もに食事をする機会があった。オープンキッチンから流れてくる熱気と、な
 らんだ空き瓶が物語る酒量のせいで、頭が少し朦朧となっていたので、どう
 してそういう話になったのかは、憶えていない。なにしろ気がついたら、二
 人が、詩人ダウスンの新書本を作る話で、大いに意気投合していたのである。
  となりのN氏の頭の中で、ペンがすらすらと走る音がする。
 「もう章立てを考えました。これは名著になりますゾ」
 「では明日ファックスしてください。いやあ、まさに名著です」
  大の男が二人して、笑顔ではしゃいでいる。しまいには、ダウスンの詩を
 つけたディーリアスの曲をうたいだす始末。
  傍で聞いていたわたしは、つい言ってしまった。「いやいや、これは、お
 めでたいですね。つまり、ダブル・ミーニングで」

  この二人、知識の量が半端なく、彼らの会話の森の中で、わたしはしばし
 ば迷子になってしまう。この時も、WHOPLUSがいま使えれば、と何度
 思ったことか。いつの時代の、どこの何者かがわかれば、少なくともそれが
 道しるべになるのに。恥ずかしながらというべきか、漫然と生きている凡人
 として当然というべきか、実はわたしは、ダウスンもディーリアスもよく知
 らなかった。
 ちなみにダウスンは『人物レファレンス事典』によると、以下のとおり。

    Dowson,Ernest Christopher (19世紀)1867-1900
    イギリスの詩人,短篇小説家。短篇集『ジレンマ』(95),
    『詩歌集』(96),など。

  聞いたり調べたりしたところによると、ミッチェルの『風と共に去りぬ』
 にはもともと「Tomorrow Is Another Day」という仮題がつけられていたが、
 最終的にダウスンの詩の一節からとって、あの有名な「Gone with the Wind」
 に落ち着いたらしい。同じように、『酒と薔薇の日々(Days of Wine and
 Roses)』というのも、ダウスンの詩からの引用だという。それを知って、
 ようやくダウスンへの興味が湧いてきた。悲恋、酒、早死。N氏とK編集長
 によれば、詩人はかくあるべし、という生き様をした人物だったそうだ。

  その翌日、章立てを確認したK編集長から、わたしのもとへメールが送ら
 れてきた。曰く、「すでに名著の貫禄ありです」と。本当にこの本が出版さ
 れることになるかは、まだナゾだ。でも、もしいつの日か、詩人ダウスンに
 ついて書かれた新書をどこかで目にすることがあったら、是非、手にとって
 読んでみていただきたい。それはきっと、名著ですゾ。

  ◎ 坂本あおい(サカモト,アオイ) 1971年東京都生まれ。
    文芸翻訳家。主な訳書に『アイス・ストーム』『ねじの回転 -心霊
    小説傑作選-』(創元SF文庫)がある。雑誌他にエッセイを発表す
    るなど“ホソボソ”と活躍中。

  ⇒ 次回は『わが家にWHOPLUSがやってきた』(丸山タケシ)です!

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