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  ■ 知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第4回) 坂本あおい
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 『書評家は賞金1200万円の夢をみるか?』


  今年も前期分の直木賞、芥川賞がでそろった。芥川賞をとった阿部和重さん
 の「新人に与えられる賞をもらうのは複雑」というコメントが、わたしには印
 象的だった。
  さて、かならずニュースで宣伝してもらえる両賞はさておき、今回わたしは、
 知名度は落ちるが頑張っている賞を発掘してみることにした。頼みの綱は国内
 の賞の情報をおさめた「賞の事典ファイル」(注1)だ。さっそく「文学」のキ
 ーワードで検索、と思ったら901件もヒットしてしまった。そこで試行錯誤
 のすえ「ミステリ」でしぼり、やっと17件という手ごろな数字に。

  リストのトップにあったのは「FNSレディース・ミステリー大賞」という
 もの。初耳だが、それもそのはずだ。「平成2年第2回をもって中止された」
 とある。第2回は「受賞作なし」。実質的に一発で終わっているではないか。
 不景気なのに賞金1000万円なんて無茶をするからだ。ところがこのご時世
 にその上をいく賞があった。「『このミステリーがすごい!』大賞」。賞金は
 なんと1200万円。
  これは公募の新人賞で、データを読んでみると特徴的なのは賞金額の大きさ
 だけではなかった。選考者は全員書評家で、ネットで読者の投票もうけつけて
 いる。
  たいてい、文学賞の最終選考はベテラン作家がおこなう。相手が新進や新人
 であっても同業者の作品を選考するとなれば、私情や偏見がまじらないともか
 ぎらない。それに中には読書習慣のない作家もいるとか。そうした先生方が無
 遠慮な選考コメントを出すから、「××賞決別宣言」をする作家がでるなどの
 悲劇も生まれる。
  一方、書評家は、作家、読者の中間くらいの位置にいる。下手な選考をすれ
 ば、自分の看板に瑕がつくことにもなる。市場もわかっているし、なにより読
 書量が多い。寄せられる作品の質にもよるが、評価については信頼できそうだ。
  それにしても賞金1200万円である。選考委員はこの方面で引っぱりダコ
 の書評家ぞろいだとはいえ、これほどの額を一度にもらえる機会はめったにな
 いだろう。右から左へと動いていく大金に、歯ぎしりしている選考者もいるか
 もしれない。ためしに賞の公式サイトをのぞいてみると、受賞者を牽制する吉
 野仁氏の言葉があった。冷静だがドスがきいている。

  「ふつう作家が得る印税収入は、本の定価の10パーセントが相場である。
  すなわち1200万円の賞金とは、極端にいえば作品そのものに対して1
  億2000万円の価値を認めたことになる。」

  1億2000万円! すごい話になってきた。受賞者も思わず襟をただすこ
 とだろう。今では国内文学賞の代名詞のようになった直木・芥川賞も、そもそ
 もは両作家なきあとの賑やかしのためにはじめられたという。「『このミス』
 大賞」もおおいに頑張って出版業界をにぎわせてほしいと切に願うのである。

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