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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第37回) 坂本あおい
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青年クライシス
少し前にボクシングの亀田青年が反則行為をやらかして世間を騒がせたとき、
お父さんやテレビの人がその行為に言及して「若さ」という言葉を使っていた。
18歳とはいえ、かりにもプロテストという通過儀礼を経験した彼だ。いったい
どれだけ若いといえるのだろう? 興味本位で公式サイトの本人のブログを読
んでみた。兄のことを「お兄ちゃん」と書いてしまうあたり、すくなくともリ
ングの外ではまだ幼いようだ。あれだけ粋がっていたことを考えると、カワイ
イというか、あやういというか。
18歳。そういえばあの歳のころは、子どもの自分と大人になったと自負する自
分が同居する、とてもアンバランスな時代だったように思うのだが、何分むか
しのことで忘れてしまった。なので青春の葛藤の代弁者、尾崎豊の歌をヒント
にしてその年頃を考察してみたい。まず15歳では「自分の存在が何なのかさえ、
わからず震え」て、行く先もわからぬまま「盗んだバイクで走り出す」(〈15
の夜〉より)。そして「17のしゃがれたブルースを聴きながら」、「少しずつ
いろんな意味がわかりかけて」(〈17歳の地図〉)、「まとまった金をため、
ひとり街飛び出して」いくことにした19になって、親父の語る昔話の意味がわ
かるようになる(〈坂の下に見えたあの街に〉)。自我に目覚めて社会に反発
し、まわりと折り合いをつけていくことを学び、父を踏み越して自立する、と
いったかんじだろうか。なるほど、大変な成長過程だ。わたしは彼が〈卒業〉
で歌った学校に通ったのだけど、尾崎に感化され、木に登って「自由になりた
くないか!」と絶叫した男子生徒もいた。青かった。
◎ 尾崎豊(おざき ゆたか)〔故人〕
昭和40年11月29日 - 平成4年4月25日 没年齢=26歳
昭和57年高2の時CBSソニーのオーディションに合格。高校卒業の直前に中退し、
58年シングル「15の夜」、アルバム「17歳の地図」でデビュー。60年「卒業」
が大ヒット。中高生の挫折感や不満感を歌い、カリスマ的存在となる。
(データベース「WHOPLUS」より)
さて、ハタチすぎれば落ち着くのかと思うとそうではないらしい。〈失楽園〉
で有名な17世紀イギリスの詩人ミルトンは〈On His being Arrived at the Age
of Twenty-Three(23歳になって)〉という詩を書いているが、そこでもまだ
悩んでいる。「時」がひそかにぼくの青春を翼にのせて盗み、23歳になってし
まった。内面は成熟しているのに、ぼくの遅い春はまだ蕾も花もみせていない。
そんなふうな言葉で、心の焦りや自信をソネットにつづっている。青年と大人
の境目でもがく若者、ここにありだ。
ところで今回のタイトルは、河合隼雄著『中年クライシス』から拝借した。
本の紹介によれば、「最も意気盛んな安定期に見えて、中年ほど心の危機をは
らんだ季節はない―」とのこと。人間は青年をすぎて大人になっても、まだま
だ大変なようだ。
【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第37回) 坂本あおい
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青年クライシス
少し前にボクシングの亀田青年が反則行為をやらかして世間を騒がせたとき、
お父さんやテレビの人がその行為に言及して「若さ」という言葉を使っていた。
18歳とはいえ、かりにもプロテストという通過儀礼を経験した彼だ。いったい
どれだけ若いといえるのだろう? 興味本位で公式サイトの本人のブログを読
んでみた。兄のことを「お兄ちゃん」と書いてしまうあたり、すくなくともリ
ングの外ではまだ幼いようだ。あれだけ粋がっていたことを考えると、カワイ
イというか、あやういというか。
18歳。そういえばあの歳のころは、子どもの自分と大人になったと自負する自
分が同居する、とてもアンバランスな時代だったように思うのだが、何分むか
しのことで忘れてしまった。なので青春の葛藤の代弁者、尾崎豊の歌をヒント
にしてその年頃を考察してみたい。まず15歳では「自分の存在が何なのかさえ、
わからず震え」て、行く先もわからぬまま「盗んだバイクで走り出す」(〈15
の夜〉より)。そして「17のしゃがれたブルースを聴きながら」、「少しずつ
いろんな意味がわかりかけて」(〈17歳の地図〉)、「まとまった金をため、
ひとり街飛び出して」いくことにした19になって、親父の語る昔話の意味がわ
かるようになる(〈坂の下に見えたあの街に〉)。自我に目覚めて社会に反発
し、まわりと折り合いをつけていくことを学び、父を踏み越して自立する、と
いったかんじだろうか。なるほど、大変な成長過程だ。わたしは彼が〈卒業〉
で歌った学校に通ったのだけど、尾崎に感化され、木に登って「自由になりた
くないか!」と絶叫した男子生徒もいた。青かった。
◎ 尾崎豊(おざき ゆたか)〔故人〕
昭和40年11月29日 - 平成4年4月25日 没年齢=26歳
昭和57年高2の時CBSソニーのオーディションに合格。高校卒業の直前に中退し、
58年シングル「15の夜」、アルバム「17歳の地図」でデビュー。60年「卒業」
が大ヒット。中高生の挫折感や不満感を歌い、カリスマ的存在となる。
(データベース「WHOPLUS」より)
さて、ハタチすぎれば落ち着くのかと思うとそうではないらしい。〈失楽園〉
で有名な17世紀イギリスの詩人ミルトンは〈On His being Arrived at the Age
of Twenty-Three(23歳になって)〉という詩を書いているが、そこでもまだ
悩んでいる。「時」がひそかにぼくの青春を翼にのせて盗み、23歳になってし
まった。内面は成熟しているのに、ぼくの遅い春はまだ蕾も花もみせていない。
そんなふうな言葉で、心の焦りや自信をソネットにつづっている。青年と大人
の境目でもがく若者、ここにありだ。
ところで今回のタイトルは、河合隼雄著『中年クライシス』から拝借した。
本の紹介によれば、「最も意気盛んな安定期に見えて、中年ほど心の危機をは
らんだ季節はない―」とのこと。人間は青年をすぎて大人になっても、まだま
だ大変なようだ。
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