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【2】知的バラエティコラム/本日も、風まかせ!(第41回)    坂本あおい
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国境なき話題

ちょっとした縁があり、先ごろ、中国の有名作家といっしょに鍋をつつく機会
にめぐまれた。ひとりは「中国でノーベル賞に一番近いといわれる」といわれ
る莫言氏、もうひとりは映画やドラマの原作・脚本を多く手がけている売れっ
子作家の劉震雲氏。ほかに宴の卓を囲んだのは、執筆家、アカデミズム、出版
関係の人など。さぞや知的な会合になるかと思いきや――。

酒がすすみ、箸もすすみ、舌はすべり。気がつけば通訳さんのみごとなリード
も手伝って、正午から昼下がりまで、ノンストップの下ネタ大会となってしまっ
た。また劉震雲さんは口も軽いがフットワークも軽く、ひょこひょこと席を立っ
てお酒をついでくださる。ご本人もくいくいと盃をあけ、朗らかに笑い、男女
のジョークを披露し、色男ぶりを発揮し、と大活躍だった。しかしさすが中国、
「イタリア男とイギリス女が」というようなエスニックジョークも、華南女が
山東男に手ごめにされ、とか、満州族がどうしたという具合に、国内で事足り
てしまう。あちこちで民族的なほころびが出ている問題の国ではあるけれど、
こうした笑い話を聞くぶんには、ある種の大陸的おおらかさが感じられて、こっ
ちまでのびやかな気分になった。

ところで、どうして人は猥談をするとき、あんなに生き生きとするのだろう? 
思うに、一緒に楽しいイタズラをしているような、あの共犯者めいた空気に胸
躍るのではないだろうか? 褒められたことでないのは知っているけれど、こ
の辺までなら許されるよね、という暗黙の了解。イタズラと猥談、いずれの場
合も楽しいことが前提で、気乗りしない人や、許容量の未知数な人を無理に巻
き込んではいけない。

わたしはといえば、無問題だった。なんでも自分の身に置き換えて考えずには
いられない多感な思春期はとうの昔に過ぎ、幻想は消え、年齢とともに達観が
身についた。それに職業柄、日常では絶対に口にしない単語をページに書き連
ねなくてはいけないこともある。今では、ちょっとやそっとの話では動じなく
なってしまった。だから莫言さんが「あのお嬢さんが赤くなってるじゃないか」
と下ネタと白酒の渦中にいるわたしを心配してくださったけれど、真昼のアル
コールが効いただけで、じつはどっちにも結構な耐性があるのでした。

さて、莫言さんは非常にうまい作家だ。劉震雲さんの作品もおもしろいらしく、
出せば数十万部(中国お得意の海賊版をいれればもっと)というのだが、残念
ながら小説の邦訳はないに等しい。あの愉快な華南男の作品の読める日を、わ
たしは首を長くして待っているのである。

◎ 莫 言(もー いぇん∥Mo Yan)
    '81年から執筆活動を始め、'84年に解放軍の芸術学院文芸部に入学した。'85
年「透明的紅蘿卜」で作風を確立、貧しい農村と、そこの農民を描き、"土の
においが濃厚"と評された。「紅い高梁」('86年)はチャン・イーモウ(張芸謀)
監督により「紅いコーリャン」として映画化され、ベルリン国際映画祭でグ
ランプリ受賞。中国現代文学の第一人者。

◎ 劉 震雲(りゅう しんうん∥りゅ ずんゆん)
人民解放軍の兵役を経て、北京大学に学び、作家に。日中戦争さなかの1942
年、大干ばつに見舞われた河南省の人々を救ったのは日本軍だったという史
実を描いたルポルタージュ「1942年、飢えた中国人を日本軍救った」が、
2006年に邦訳され注目を集める。
(WHOPLUSより)

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