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  ■ 知的バラエティコラム/本日も、風まかせ! (第2回)坂本あおい
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 『昔きどって東京散歩』


  東京の四谷に荒木町という飲食街がある。この前、初めての店を訪れるこ
 とになったのだが、お店が提供している地図は線が二、三本交わっただけの
「洗練」されたものだった。これではどうも心ぼそい。なにしろあの界隈はか
 つての花街で、狭いすり鉢状の地形に細い路地が入り組み、たくさんの飲食
 店がひしめいているのだ。おまけにわたしは「地図の読めない女」ときてい
 る。

  詳細な地図を求めてウェブをさまようと、この町がもともと松平摂津守と
 いう人物のお屋敷だったことがわかった。明治に入ると、庭園にあった大き
 な池と天然の滝が人々の人気を集め、やがて周囲に芝居小屋や料理屋ができ
 て、大衆の遊び場となった。時代がくだるとともに高級化し、料理屋、芸者
 置屋、待合の三つがそろった三業地となり、昭和の中ごろまでは、まだ花街
 のにぎわいをみせていたという。

  さらにわかったことがあった。永井荷風が新橋芸者の八重次を荒木町に住
 まわせて、自宅と往復する日々を送っていたのだそうだ。ストリップ通いの
 変わり者で知られる荷風だが、もっと面白いネタがないかとWebWHOを
 見てみると、さらなる奇人ぶりが浮き彫りになった。「貯金通帳を握りしめ
 て死去」! 通帳の入ったバックが枕元にあったとする説もあるようだが、
 わたしとしてはこの「握りしめて」を信じたい。そのほうが、なんだかドラ
 マチックだ。
  なんと八重次のデータもあった。芸者とは仮の姿で、なんでも初めて日舞
 をヨーロッパに紹介した舞踏家なのだそうだ。類は友をよぶが、才能も才能
 をよぶものらしい。

  実際、荒木町を訪れて、荷風が歩いていたころの大正の香りをかいでみる。
 残念ながら、かつての花街を思い起こさせる建物はほとんど残っていない。
 それでも奇妙に折れ曲がった一本道や、なにやら奥の方へ続いている横道を
 歩いていると、それらしい気分になってくるから不思議だ。「少し酔ったか
 知ら。」「それぢやア、鳥渡(チョット)津の守の池まで歩いて見やうか。」
「弁天様があるところね。あすこはむかし、景色のいいところだったんですつ
 てね。」
  果たして、勘をたよりにすり鉢地形の底のほうに行ってみると、江戸時代
 には幅150メートルほどもあったという池は、今は十分の一以下の大きさ
 になっていた。水はよどみ、奥手の高台にある建物からはカラオケの音がも
 れてくる。まあ、気にしない、気にしない。時代は移り変わるのだ。
  昨今、隠れ家的店というのが人気だが、ここはいわば昔が香る「隠れ家的
 町」。すっかりファンになったわたしは、今宵も荒木町に出かけるのであっ
 た。

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